国会リポート 第443号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 技術で勝ってビジネスで負ける。これぞ日本のお家芸(苦笑)。我々の自虐ネタです。その例として私が挙げてきたのが「ウォークマンで携帯ステレオ革命をおこしながら、傘下のレコード会社に気を使い過ぎてネット接続をためらい後続のiPodに敗退」「ドコモのiモードは世界で最初に携帯をインターネットと繋げる革命を起こしながら、独自仕様にこだわり後続のスマホに敗退」「ハイブリッドは内燃機関エンジンに革命を起こしたのに、技術の囲い込みで世界的な普及に失敗」更に言えば古くは「3Dプリンター」や「量子コンピュータ」も日本の発明、発案でありながら後続企業に実用化を握られました。日本の「技術で勝ってビジネスで負けた」歴史です。

 「NTTとKDDIが6G光通信を共同開発」と報道されました。iモードの教訓からNTTは独自の光技術を使ったIOWN(光技術による次世代通信基盤)構想を最初から国際標準化を視野に世界に開発参加を呼びかけ「オープン&クローズ」戦略で技術の協働化に重点を置いています。

 数年前そのNTTのトップからIOWN技術開発の研究所の(可能な個所の)視察を打診され速攻で行って来ました。終わった後にその役員から言われた言葉は「一番悩ましいことはこの研究に参加している研究者に産業スパイが紛れ込んでいないという証明が得られないことです。勿論、皆を信頼はしていますが」

 最近頻繁に耳にすることは、研究者が外国の研究者と共同研究しようとする際、先方から「ところであなたはどのレベルのSC(セキュリティー・クリアランス)資格を持っている人ですか」との問いだそうです。そういう制度そのものが日本にはないと返答すると愕然とされるそうです。SCの制度や秘密保持契約で厳密に知財が管理されている手法はアメリカには及ばないところです。

 アナログ社会からデジタル社会に代わるということは、データの集積量が数百倍、数千倍となっていくということです。つまりデータセキュリティーに格段の注意を払わなければならないということになります。情報セキュリティーやそのバックグラウンドたるインテリジェンス(諜報)に疎かった日本も正面からこの問題に向き合わなければならない今日です。特にサイバーの世界では専守防衛という理屈は成り立ちません。専守防衛とは敵の攻撃があった事実をとらえて、防御を自国の領土領空領海、及びその隣接区域で行うということです。従来の物理的な専守防衛では、攻撃側の武器を損傷させるという意味で、相手にも経済的損害を与えるということが抑止力という考え方でした。しかし、第二波、第三波と攻撃を受け続けるだけでは敵の兵器力が消耗するだけのダメージしか与えられません。攻撃力を消失させない限り人的被害は守る側だけ、さらに物理的被害も守る側が甚大となります。ましてサイバー攻撃には平時と有事の境目も国境もありません。フィジカルと異なり攻撃側は何も消耗しません。相手を特定して発信元を機能不全にさせることがサイバーの世界でのまさに防御です。

 アクティブ・ディフェンス、能動的防御。単純に攻撃をかわしているだけでなく、相手の攻撃力を消失させる。抑止力とは攻撃が割に合わないと相手に認識させることが重要なのです。

 世界の現実を見れば、外交発言力は軍事力と経済力の大きさに左右されます。防御力で普通の国になり、加えて経済大国であり続けることが外交を進めるうえでの裏付けとなるのです。

 

今週の出来事「バロメータ?」

 今年の花粉飛散量は例年の数十倍だそうで、花粉症レベル3の私も朝起きたら目は痒いわ、くしゃみはとまらないわ、悲惨です。薬を最新のものに替えてみましたが、改善というところまでいきません。

 一昨日の党本部での朝の勉強会の挨拶は「今日は花粉症が最悪で、頭もボーっとしてます。今私のIQを測ったとしたら多分160くらいしかありません」

 すかさず進行役の小林史明事務局長が「この前の会議では150でしたから少し上がりました」「うん、ちょっとは良くなった」

 娘が「普通、年を取ると免疫力が落ちて反応が弱くなるのにパパってすごいね」

 そーかぁ、若さの証し?来年も花粉症で頑張るぞ!ん?何か違う?