国会リポート 第428号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 各国のデータから新型コロナウイルスの変異型であるデルタ株の実態が次第に明らかになってきました。従来、ウイルスに関する世界の常識はウイルスが変異する際には感染力は強くなるが重篤化させる能力は弱くなるというものでしたが、このデルタ株は両方強力になっていくという厄介なものです。しかしファイザーやモデルナのワクチンを接種すれば、たとえ感染しても重篤化したという報告にはほとんど接していないということです。つまりデルタ株に関してはワクチンの接種、未接種の病変の差がさらに拡大するということです。我が国のこの2種類のワクチンの確保量は9月までに1億1千万人分、10月にさらに1千万人分、合計1億2千万人分の確保が確定しています。接種対象者は12歳以上ですから約1億1千万人、接種希望者が8割(各国は7割に届かせるのを目標にしているようです)とすれば対象者は9千万人弱、つまりワクチンの量は十分に足りています。今の接種ペースで言えば10月中には完了します。頑張れば10月初旬というデータもシンクタンクから報告されています。つまり、待機中の未接種の方はあと2か月間自身と家族の為にリスクのある行動は避けて下さい、とお願いすることです。

 先般、ある出版社の主催でスタンフォード大学の医療系主任研究員の方と製薬企業の社長と私とで3者対談が行われました。私がアメリカの直近の状況を尋ねると「ワクチン接種者でも罹患する人はゼロではありません。しかしその場合でも極めて軽症です。」という返答でした。ワクチン接種までは慎重な行動、これが共通のキーワードです。

 ところでCOP26(第26回気候変動枠組条約締結国会議)に向けたG7やG20の結果は残念ながら「国益にも地球益にもならなかった。」と感ぜざるを得ません。最大のCO2排出国中国のしたたかな交渉術に先進国は敗北した、と映ります。先進国は血反吐(ちへど)を吐く様な努力でCO2(温暖化ガス)排出量を半減しなければならないが、世界の排出量の3割(!)を排出する中国は向こう10年間出し放題の権利を持つ、という結果です。先進国が、のたうち回って半減しても地球温暖化は進む、というもの。せめて向こう10年間減らさずとも今よりは増やさない、と中国を説得すべきでした。中国の主張は「先進国(世界第2の経済大国の中国を途上国と呼ぶのでしょうか)はCOPの枠組みが出来るまでは排出量を増大し続けて成長して来た、だから自分にもその権利がある」と言う主張です。先進国には当時省エネ代替技術は有りませんでした。今は生産を落とさずCO2を減ずる技術があるんですから省エネ投資をすればいいだけの話です。石炭火力は、CO2を大幅に減じた最新の超々臨界の輸出も先進国には禁じられましたが、よりCO2排出量が多い中国の石炭火力の輸出は許されるのです。アセアン等の新興国、途上国にとって石炭火力は現状では必需品です。日本の最先端火力が撤退した後を中国製のより劣後した火力が代替する。そんな構図になりそうです。注目を浴びるカーボンプライシング政策の条件は(1)代替技術が開発され、そちらに乗り換える設備投資が可能であること、最低でもその技術が直近で開発実用化されること(2)極力その技術が国内にある、又は国内で開発されること、払った賦課金が海外のライバル企業に渡るような事にだけはならないことです。最悪なのは単にカーボンプライシングの負荷を日本企業にかけ、賦課金が海外に渡るだけの愚策になってしまうことです。

 

 

今週の出来事「ウォーキング・ダッド!」

 週末は原則1時間半ウォーキングをすることにしていますが、平日も極力1時間歩いて通勤をしています。道すがら明らかに運動していると思われる人は腕を前後にしっかりと振って歩いている人です。私も極力膝をまっすぐ伸ばして踵から地面に付けてウォーキングの効果が出るようには気を付けていますが腕はそれ程大げさには動かしません。両手を揃えて前に出して歩いた分にはゾンビと間違えられますから。

 それにしてもネットフリックスやアマゾンプライムで米国映画を見ると、何とウォーキングしているゾンビ映画の多いこと!アメリカ人てゾンビ好きだね。それに見てるとゾンビって凄い生命力なんですね。「ゾンビ企業」って表現変えた方が良くないですか?撃っても撃っても甦って来る死なない企業ってわけじゃないよね?いや「お前はもう死んでいる」か(笑)