国会リポート 第424号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 半導体戦略推進議員連盟を立ち上げました。安倍前総理、麻生副総理と私とで3Aがそろい踏みをし、「すわ政局!」と多くのマスコミが面白おかしく報じました。そんなつもりは全くなく、半導体戦略の重要性が国運のみならず自由主義陣営の運命までかかっているという深刻さを広く理解してもらうために総理経験者2人に看板になって頂いたわけです。

 デジタル戦略政策と経済安全保障政策の責任者を務めていますが、半導体戦略はこの2つと表裏一体の関係にあるからです。今までにも報告させて頂いている通り、経済安全保障政策は時として「経済が ミサイル以上の威力を発揮する」ということであり、「日本のチョークポイント」と日本が握ることが出来る「他国のチョークポイント」を洗い出し、その克服策と強化策を同時進行で進めていくことです。経済安全保障はとかく機微技術をどう守り育てるかに視点がいきがちですが、医療現場の必須アイテムであるマスクや医療用手袋や医療用ガウンの供給が途絶えただけで医療崩壊を起こし、その国を崩壊させることが出来る。経済安全保障はローテクでも主権侵害をされるという事実です。そしてデジタル革命戦争は単なる40年前の再来とは別物の衝撃波です。半導体の役割とそれがもたらす結果は40年前は個々の製 品の高機能化であり、国の繁栄を賭けた戦いでした。現在は社会全体の高機能化であり、陣営の繁栄を賭けた戦いです。意味合いの深さもそのスケールも別物です。

 半導体は人間の体に例えると目や耳や鼻や舌や皮膚、いわゆる五感で外界の情報を得る役割がセンサーなどのアナログ半導体です。特に目のセンサー、網膜の役割をするのがソニーのイメージセンサーでこの分野では設計から製造まで垂直統合で世界を制しています。五感すなわちアナログ半導体で得た情報は脳に送られます。脳で分析解析をしデータを記録させ、あるいは記録したデータを引き出して新たなデータと統合し、体に指示を出す脳の役割はCPUやGPUであるロジック半導体の役目です。脳のデータを出し入れする記録装置はメモリ半導体であり東芝から派生したキオクシアの得意分野であり、これも垂直統合分野です。そしてロジック半導体から出されたソリューションは各運動機能に指令として発出されます。その信号を受け筋肉等各機能を動かすのがパワー半導体の役割です。人体を社会全体に置き換えると各種半導体が社会システム全てを動かしていくということがわかります。

 各種半導体の製造には、設計から製造まで垂直 統合で行われるものと設計と製造が水平分業して行 われるものとがあり、個別に綿密な戦略を立てることが重要です。電子機器の頭脳の役割、CPU・GPUは 設計で世界を制する者と製造で世界を制する者の覇 権争いです。設計は米国NVIDIA、製造は台湾TSMCが覇者となりつつあります。設計から製造まで垂直 統合で行っている世界チャンピオンのインテルも戦略変更を余儀なくされる程熾烈な競争になっています。特にNVIDIAがソフトバンクから半導体コア設計のチャンピオン、Arm社を買収したことはその感をさらに強めました。設計から製造まで一気通貫で行って生き残る部門、水平分業を戦略的に進めて生き残る部分、国家の命運と陣営の命運をかける戦いは半 導体の種類ごとの綿密な戦略の上に初めて成り立ちます。半導体チップ生産はかつての50%から10%に落ちたとはいえ、東京エレクトロンを始めとする半導体マザーマシンのシェアは35%、半導体材料のシェアは世界の55%を握っている日本は戦略の立て直し方次第で必ず復活します。半導体議員連盟の発足式で私が掲げた目標、ジャパン・アズ・ナンバー ワン・アゲインは夢物語な目標ではありません。

 

 

今週の出来事「頑張るワン!」

 前回号で「夫(犬)と猫のしつけ教室」に関して記述したところ複数のメディアから、その場所の問い合わせが来ました。赤坂見附の交差点から青山方面に向かった最初の歩道橋のところ、○○動物病院の看板ですがマスコミから動物病院への問い合わせが殺到したため、新たに「夫のしつけ教室」の開設も検討しているようです。(冗談ですよ)

 今朝もウォーキングでその看板の前を通りながら『しつけされないように頑張るぞ!』と自分に言い聞かせながら登院してきました。