国会リポート 第417号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 「コロナ対策で総理のリーダーシップが見えない」「緊急事態宣言が後手後手に回っている。知事に丸投げではないか」テレビのコメンテーターが異口同音に政府を非難し、内閣支持率が下がっています。菅総理がちょっと気の毒なのは新型インフルエンザ特別措置法の法律上の建付けが、地域ごとの感染状況の差異に鑑み大部分の権限を知事に移管をし、政府は総合調整を担当するという構造になっている点です。緊急事態宣言も勿論、政府判断ですが地方の状況に沿って判断するという建付けです。故に知事の要請が重要です。東京都についても緊急事態宣言を発する以前から、菅総理は小池知事に対し飲食店の20時までへの営業時間短縮を要請していましたが、小池知事は「東京なりのやり方でやらせてもらいたい」と要請には応じなかったという話です。知事から要請があって初めて総理は腰を上げたと誤解されている状況に困惑をしている苦悩が感じ取れます。そもそも法案の審議の際にも、私権制限は極力慎重にという注文が付いていましたから、総理を悪者にするのはちょっと可哀そうな気がします。感染拡大の原因の一つに飲食の場が挙げられるのは専門家会議でも指摘のあったところです。なぜ20時にするかというところにカギがあります。年末休みにホテルやデパートの食堂で食事をする機会がありましたが、入り口で体温を計り消毒をし、テーブルは一つ置きに、しかもはす向かいで着座をし、テーブルの真ん中にはさらにアクリル板で仕切られているという厳重な対応でした。20時を過ぎて集客する飲食の場で、そこまでの緊張感が共有されていればいいんですが・・・。

 年末に深夜酔っ払って嬌声を上げマスクもしないでタクシーに乗り込んでくる若者をリスク管理から乗車拒否は出来ないんでしょうか、とのタクシー運転手さんの嘆きが報じられました。問題は全力でウイルス対策に取り組んでいる店と夜半まで嬌声を上げながら盛り上がっている店とを同列に扱う事です。20時と言う仕切りは「整然と食事を楽しむ」と「嬌声を上げつつ盛り上がる」の線引きをする時間帯なのではないでしょうか。

 今朝もあるシンクタンクが主催するシンポジウム(テレビ会議)で基調講演を行いました。学識経験者や企業のトップが参加する場でデジタルトランスフォーメーションと経済安全保障の関係について話をし、参加者からの質問にも答えました。経済安全保障というのは、時に経済は軍事以上の武器になるという話です。2010年に尖閣諸島周辺を警戒中の海上保安庁の警備艇に中国漁船が体当たりを掛けました。それはビデオでも明白な事実でした。海上警察権を行使し、公務執行妨害で漁民を拘束しましたが、中国政府は猛然と抗議をし、その後に日本へのレアアースの輸出を差し止めました。中国側は色々と差し止め理由が事件とは関係ないとの言い訳をしましたが、まさに経済は武器になるという証左です。コロナ禍で日本の脆弱性が洗い出されました。医療用マスクやガウンが供給停止になれば、いとも簡単に医療体制は崩壊するということも明白になりました。経済安全保障は先端技術の漏洩だけでなく、ローテクの供給遮断でも簡単に起きるという事が如実になった訳です。エッセンシャルワークの消耗備品は備蓄を義務付け、そのサプライチェーンは国内回帰をする等、脆弱性のカバーが必須です。コスト上無理な場合は同盟国、同志国間のサプライチェーンとする。省庁間テレビ会議が機能しない等デジタルシステムのアキレス腱も明らかになりました。新型コロナは世界各国に惨状を撒き散らしていますが、その災いから学びあらゆる脆弱性の洗い出しとその克服策の完全な構築に繋げなければと党を挙げて政策提言中です。

 

 

今週の出来事「ファクト?」

 食事制限と連日のウォーキングで6キロ減量したのもつかの間、年末年始で2キロリバウンドしてしまいました。これを取り返すのが大変。1日一食にして、2時間のウォーキングをしても減量できたのは1キロだけ。

 山田太郎議員から「人類は100万年前の飢餓の時代に食べられるときに栄養は全て蓄えておくというDNAになっていますから、1日1食は決してダイエットに向かないんだと思いますよ」

  う~ん、山田さん・・・。1日三食で、体重三ケタの人?あんまり、説得力なくない?(笑)