国会リポート 第433号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 ブロックチェーン技術の活用によるNFT(ノンファンジブル・トークン)経済の推進。現在自民党デジタル社会推進本部で日本が遅れをとっているブルー・オーシャンとして議論されています。なんのこっちゃと思われる方も多いかと思います。何を隠そう私もついこの間まではその一人でした。NFTとはひと言で言えば、鑑定書付きデジタルデータの事です。コンピュータで絵を描くことはその道の人にすればたやすいことです。しかしデジタルの世界では1ミリも劣化なくオリジナルの完璧コピーが出来ますから、それだけでは何の価値も生じません。オリジナル作品にデジタル鑑定書が付き、鑑定書がコピーできないものになれば、そのデジタル作品の真正品は世界に1個であり、それ以外はコピー品という区別がつきます。その時点でそのデジタル絵画には価値が生じます。真正品の証明と所有者の証明がブロックチェーンで担保されれば、デジタル世界のコンテンツが財の対象になるという仕組みです。

 世界で一番売れているNFTはアメリカ、プロバスケットボールリーグの選手のベストショットです。アナログで言えば限定品のトレーディングカードです。パソコンの中にデジタル作品を保有して、悦に入っている心境にはとてもなれないアナログ世代ですが、世界はNFTの取引が爆発的に伸びています。世界で注目されているBored Apeは漫画イラストの類人猿(Ape)を色々な表情で1万枚オリジナルを作成し、それを購入した人々によるクラブ社会を形成し、色々な会員限定イベントを開催しています。会員限定のゴルフクラブが一つの社会を編成している感じ(?)です。本物と偽物が誰にでもひと目で区別されるシステムが普及すれば真っ先に無くなるテレビ番組は私の好きな「なんでも鑑定団」かもしれません(笑)「いい仕事してますねェ」が消えていくのは残念!それはともかく問題はNFTが爆発的に拡大している現在、NFTの環境整備が劣っている日本からクリエイターが活動拠点をシンガポール等に移していることです。

 デジタル社会ではアナログ社会で定義する経済概念が覆っています。従来のGDPの概念では捉えきれない経済分野が一挙に拡大をし、各種統計そのものに変革を迫っています。リアルの世界の経済とバーチャルの世界の経済の比率の入れ替えが今後進んでいくことになれば、人間の日常も変化していきます。

 数年前にヒットした「レディ・プレイヤー1」というハリウッド映画は主人公がソファに横たわってバーチャル世界へ誘導するヘルメットを被り、自らの姿をバーチャル世界でアバターに変え、「オアシス」と命名するVRワールドの創設者の莫大な財産とその仮想世界自体を相続する権利の争奪戦に17歳の少年がチャレンジするという物語です。起きているリアルの世界と眠っているバーチャルの世界での活動の比率が次第に後者に移動していくとしたら、リアルの世界は生命を維持するだけのエネルギー供給の場と化してしまうかもしれない、あの映画を見ながらそんな恐怖を感じました。

 さてオミクロン株のピークアウトが政府の想定からずれ込んでいます。その為か「まん延防止等重点措置」から「緊急事態宣言」へと移行すべき、という主張があります。オミクロンの特性を考えればその効果は限定的です。オミクロンは新型コロナの中では「感染力」は最強で「毒性」は最弱です。「人流」をさらに制限しても「感染防止効果」は限定的で「経済減速効果」は強力となります。肺機能を破壊するのが従来のコロナとするなら、喉で留まって体力を減衰させるのがオミクロンだと言われています。だとするなら基礎疾患保有者や体力のない高齢者によりフォーカスを絞り、それ以外は感染したら迅速に治療薬を処方することです。だからこそ治療薬の治験を加速させ、薬局で処方対処できるようにすることが重要です。

 

今週の出来事「ホントのようなウソ?」

 かねてからの友人である文化庁長官の都倉俊一さんとコンテンツ戦略を話し合った翌日、地元で小学生に三権分立の話をした際、
「今、文化庁の長官はあのピンクレディーの作曲家の都倉俊一さんなんだよ」
「ピンク・・・?」
ピンクレディーを小学生は誰も知らない・・・私が「なんとか坂」の区別がつかないのも無理はない?

 そういえば今度、全日空に片野坂46が出来るってホント?(全日空HDの新会長は片野坂さんです(笑))