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あけましておめでとうございます。今年も国会リポートを愛読頂いている皆さん、そして多分大多数だと思いますが、今週の出来事だけ心待ちにしていただいている皆さんにとって素晴らしい一年であることをご祈念申し上げます。
さて、史上最速ともいえる日程でスタートした通常国会は補正予算の予算委員会の論戦がスタートしました。民主党の質問者がアベノミクスは失敗したという論拠に使っている「実質経済指標はどれも民主党政権の方がよかった」という主張は極めて聞いている人をミスリードする主張です。わかりやすく言えば給料は下がったけれども物価はそれを超えて下がったので、実質の給料は民主党政権の方が上だと胸を張る主張です。受け取る給料が下がっても物価がもっと下がっていれば良しということを容認してしまうとデフレを容認することに繋がります。デフレは放置しておけば、縮小均衡へと向かい、経済は限りなく縮小していきます。バブル崩壊以降、15年以上デフレが続き、世界の経済規模はこの20年で約3倍になっているにも関わらず、日本経済は10%縮小してしまった。この泥沼から脱すべくデフレ脱出政策に安倍政権は取り組んでいるのです。民主党政権と安倍政権の3年間を比較すれば民主党政権は名目GDPで3兆円伸び、物価下落等により実質GDPは28兆円伸びました。一方、安倍政権では名目GDPは28兆円伸び、物価上昇等(これはデフレを脱却する重要な要素です。)を割り引いた実質GDPでも12兆円伸びました。目指している健全な経済とは名目GDPが3%程度、そして(物価上昇率を差し引いた)実質GDPでも2%程度伸びるという姿です。物価が下がっている分だけ実質経済が伸びたことになるということを誇示することは、望ましい経済成長の姿ではないのです。
合わせて申せば財政再建は喫緊の課題です。税収が伸びなければ財政再建もできません。そしてその税収は名目GDPの伸びに連動しています。民主党政権下の3年間で国債発行額(借金)は連続して40兆円を上回り、3年目には税収よりも借金による収入の方が4兆円近く多い財政となりました。安倍政権では初年度から公債発行収入は税収以下に抑えてきました。そして3年目には公債発行を民主党政権時より11兆円以上削減を致しました。税収は民主党時代より12兆5千億円増えました。消費税による増収は6兆2千億円であり、残りの6兆3千億円は主にアベノミクスに由来するものです。
しかも民主党政権は、リーマンショックで日本経済がどん底に落ちた後に大規模な経済対策を打って浮上しようとしているところからバトンタッチをしました。スタートが極めて低い状況からですから、その分は割り引いて考えなければなりません。時系列的に申せば、2008年の9月にリーマンショックが起き、その後の最初の四半期、経済は年率マイナス13%となり、次の四半期はそこからさらに年率マイナス15%も急落しました。そして、麻生内閣は翌年4月に15兆円の経済対策を打ち、その効果が出始めた5か月後に民主党は政権を獲得したわけです。「名目成長をプラスにする。」この認識がデフレ脱却にとって極めて重要です。給料は下がったけれども、物価がもっと下がっているからそれで良し、という主張はデフレ脱却にとっては絶対してはいけない主張なのです。 安倍内閣は経済と財政を一体的に再生させるプランです。歳出の無駄や非効率の是正をし、合わせて経済成長により歳入を伸ばしていく。出と入り両方の改革が至上命題です。歳出の改革は従来と大きく異なる方式を目指しています。従来は歳出にキャップをかけ無理無理にでもカットしていくというやり方です。これは個別の単価や賃金の抑制に繋がりがちです。「苦しくなれば改革が起きる。」を期待しましたが、画期的な取り組みは起きず、やがて数年後に暴発をするということが起きました。安倍内閣では支出構造の「見える化」を図り、問題点をあぶり出し、より効果的な支出にする「ワイズスペンディング」を図ります。いわば「我慢の行革」から「工夫の行革」への転換です。