国会リポート 第442号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 ネットを中心にかつてないほど人心がすさんでいますが、日本全体が夢を持てない現状が最大の原因だと思います。その認識に立って政府与党は結束をして夢を掲げ、実現への道を描くのが政治の責務です。私はこの十数年、自由貿易の礎TPPを妥結に導き、デジタル庁設置の党側責任者としてこれを実現し、5年前から問題提起をしてきた経済安全保障推進法も成立をさせてきました。現在取り組んでいる日本全体に共有して戴けると信じている「夢の実現」がラピダスとGSUC(グローバル・スタートアップ・キャンパス)構想です。ラピダスは日米欧の連携で世界最高峰のロジック半導体を量産できる体制を通じ、半導体産業全体の復興を図るというプロジェクトです。数年前からSEMICOM JAPAN(半導体国際展示会 in JAPAN)に関わってきました。3年前にはオープニングシンポジウムで東京大学 五神総長(当時)、東京エレクトロン 東会長(当時)とともにパネルディスカッションを行い、2年前には700人の聴衆を前にキーノートスピーチを、そして昨年は総理の挨拶の後のキーノートパネルディスカッションで五神理化学研究所理事長、東半導体・デジタル産業戦略検討会議座長、小池ラピダス社長、ギルIBM上級副社長と共にパネリストとして参加しました。その前週にIBMとラピダスのパートナーシップ締結並びにラピダスとベルギーの世界的半導体研究機関であるアイメックとの協力覚書も結ばれており、半導体産業復興のシンボルたるラピダスが華々しいデビューを遂げました。IBMが総力を挙げてラピダスの技術者をその中核拠点でトレーニングし、2ナノ世界最先端ロジック半導体の5年以内の量産へと邁進していきます。九州にTSMCを招致し、ほどなく九州はシリコンアイランド復活宣言をしました。ラピダスの本拠地が決まれば、さらなるインパクトを引き起こすと思います。

 グローバル・スタートアップ・キャンパス構想は岸田総理が所信で表明を致しました。国内外のトップランク大学のサテライトキャンパスを誘致し、シリコンバレーの未来型としてアジアのハブとなる都市型イノベーション拠点を作ります。かつて寂れた倉庫街だったボストンの一角をMIT(マサチューセッツ工科大学)が核となり、ケンドールスクエアというバイオを中心としたイノベーション拠点を作り上げました。シリコンバレーは年月をかけて自然発生的にできたイノベーション拠点ですが、いまや計画的に作られる都市型イノベーション拠点へと流れは変わりつつあります。江戸時代に長崎の出島にフリーゾーンの国際貿易拠点ができたように、東京に国際イノベーション拠点ができます。GAFAとは違うディープテックがユニコーンへと繋がる拠点です。日本の研究者、学生とアメリカのそれとASEANのトップランクの学生、研究者が集うエリアです。5年後には形となる夢の構想です。

 私が「やっぱり日本は捨てたものではない」と確信したのは、IBMの上級副社長と面談した際も、海外トップ大学関係者と面談した際も、日本の魅力の一つにモノづくりの力を先方が掲げたことです。夢を共有する数人の議員とチームを組み、数年前から取り組んできたことが具体化しつつあります。TSMCの熊本誘致に最大4760億円の国費が投じられます。賛否はありましたが、実行してみれば地元のシンクタンクによると、その経済効果は4兆2千億円と公表され、熊本はかつての高度成長期の日本の様な活況が始まっています。未来(ゆめ)を実現(かたち)にするのが政治家の仕事です。10年後に「あの決断が今の日本の礎を築いた」と言われるよう頑張ります。

 

今週の出来事「残念なお知らせ」

 個人番号法の改正に伴い、戸籍の氏名に振り仮名が義務化されます。既に公的にも使用されている読み方の変更はありませんが、今後「海」と書いて「マリン」と読ませるような、いわゆる「キラキラネーム」をどこまで認めるかが論議となりそうです。逆に言えば今までは届け出漢字と読み方の関係は事実上無関係だった訳です。

 自民党内で一部共有されている「甘利明」と書いて「ジョージ・クルーニー」と読むことは、今後は出来なくなりそうです。