国会リポート 第419号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 コロナが2年目に入り対策が長期戦になっています。長期戦になればなるほどコロナを制御しながら経済を回していく知恵が必要です。「ブレーキとアクセルを同時に踏む」ことが必要です。要はさじ加減、踏み加減です。過去の検証によれば、やはり密な状態での会食が一番避けるべきことです。緊急事態宣言の解除に従って会食の在り方を厳格に規定していくことが肝要です。某週刊誌が金田勝年予算委員長が秘書とホテルで昼食をとったことを非難していましたが、そのホテルは1テーブルに2人までしか着席させず、しかもはす向かい着席で、隣のテーブルとの距離もとっているということです。会食をする場合は検温をし、手洗い除菌をし、テーブルは満席にせず可能であればアクリル板対応。懸命に努力している店と、何の対応もせず夜半まで騒いでいる店を一緒にしないようしっかり区別すべきです。「アクセルを踏みながら、ブレーキも踏む」とはこうしたことです。緊急事態宣言下で新規罹患者数が次第に減ってきています。悪戦苦闘中の欧米の状況と比較すれば不思議な現象ですがやはりマスク、手洗い、消毒文化が定着した結果ではないでしょうか。この防御策を緩めることなく、ワクチン接種が充実していくことが最強の手段です。

先日ライブ・エンタテイメント業界関係者が陳情に来られました。ライブ開催が出来ず、出来たとしても採算が取れず、配信だけでやっていけるアーティストはトップ5程度。武道館を満席にする一線級のアーティストも事務所の規模を縮小し、賃料の安いところに移るという惨状を伝えられました。私はJ-LOD(Japan content-LOcalization and Distributionコンテンツの現地語翻訳と配信)の前身のJ-LOP(Japan content-LOcalization and Promotion)の設立時からエンタメ業界を支援してきました。先の第1次補正予算でJ-LODlive、演奏と配信支援金を868億確保し、関係者から感謝の挨拶を受けましたが、費用支払い後の2分の1補助であるため、元銭も出せず、手続きも煩雑で予算の執行実績1%と報告を受けました。ライブ・エンターテイメント団体からのたっての要請でもある概算払い方式を直ちに実行できるよう体制の見直しを要請しました。それにしても聞けば誰もが知っているメジャーなシンガーの事務所ですら後がない状態に追い込まれているとは、コロナの影響の深さを改めて思い知らされました。

 今日(2月12日)私が主催している派閥横断の政策集団「さいこう日本」の定例会でJ-LODliveの顛末を報告した際に出席議員から「落語界も300人の寄席に一桁の客で窮地に陥っている」という報告がありました。落語は聴衆の頭の中に情景をイメージさせ登場人物を想像する日本独自の芸能です。名人芸なる先人を何人も輩出している文化です。参議院の世耕幹事長が会長をしている党のクールジャパン戦略推進特別委員会はエンタメ関係の振興支援をしてきた党の中心的組織ですが、そことコンテンツ産業振興議員連盟と音楽文化振興議員懇談会の連名で合同で直近の状況聴取をしようということになりました。私も3会の会長や顧問をしていますがこの3つの会の主要メンバーはほとんど共通しています。国家財政上の限度や他業界との公平性から「営業補償」はできませんが、歴史的・現代的文化が存続していくように最低限の手は打っていかなければならないと思います。

 

 

今週の出来事「不出来(ヒデキ?)感激!?」

 2児の母の娘が最近携帯電話を私と同機種に変えました。そこでテレビ電話が出来るようになり、近くに住んではいますがコロナ下でも孫の顔が見れるようになりました。上の男の子は来月で5歳になります。テレビ電話で「誕生日プレゼント何がいい?」と聞くと「じーじには自転車買って」との返答です。

 誰も住まなくなった実家を取り壊した際に、私が生まれた時からの古い写真をデジタルデータ化しました。その中に思い出の自転車の写真がありました。思い起こせば中学2年になったある日、家に帰ると真新しい流行りの自転車が置いてありました。まさかと思いつつ、「この自転車は?」と聞くと「お前のだよ」と母から言われました。何の前触れもなかっただけにその感激は今もよみがえります。

 5歳の誕生日に、しかも通告付きで買ってあげたら感動は俺の100分の1だろうね。今の子は恵まれてる分だけ不幸ですね。