国会リポート 第415号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 米国大統領選挙結果を待ってからと思っていた今週号発行は、アメリカ独特の選挙結果確定手続きを甘く見て大幅に遅れてしまいました(スミマセン)。日本はどんなに遅くとも投票日深夜には全ての選挙結果は確定しますが、アメリカ、特に大統領選挙は開票作業そのものに時間がかかる上に相手候補が敗北を受け入れ敗北宣言をし、勝利者を讃える演説をして初めて勝者が勝利宣言をする、という伝統的手続きがあります。それ自体、アメリカの成り立ち「合衆国」の長を決める歴史的意義を持つやり方なんでしょうが、過去に共和党ブッシュVS民主党ゴア候補の時も結果確定に時間を要しました。今回も揉めています。相手が敗北を認めない場合は、確定をする手続きは最長最高裁判決までかかる様ですから、最悪憲法が定める期限までずれ込む可能性もあります。民主党のバイデン候補側は勝利宣言をしていますし、間違いなく政権交代となるのでしょうが、例えどちらがなったとしても日本は難しい舵取りを迫られます。トランプ氏はアメリカの「利」が行動原理で突破力は最強ですがその破壊力は時として日本にも向けられますし、自由主義陣営の結束すら図れないケースがしばしば有りました(幸い安倍総理との人間関係がセイフティネットとして働いてきましたが)。次期選挙の制約から解き放たれた二期目はブレーキの付いていないブルドーザーになると心配されていました。一方、バイデン氏には「理」は通ると思いますが閣僚の人選によっては権威主義陣営に対する牽制力が弱まるのではと心配されています。幸い議会は民主・共和、上下両院とも基本的考えは共有されていますからそれ程心配はないとは思います。

 大事なことは日米関係は最重要のニ国間関係であると同時に、アメリカの東アジアに於けるプレゼンス(存在感)は世界の安定にとって絶対条件だという事です。それに基づいた自由で開かれたインド太平洋構想はコロナ後の世界秩序に必須要件であると言うことに繋がって行きます。

 私の主宰している「新国際秩序創造戦略本部」はデジタルトランスフォーメーションの社会実装により実現される近未来社会が、官民を通じたあらゆる手続きやサービスを、ストレスなくワン.クリックで利用できデジタル能力や年齢・性別・距離等あらゆる制約を超えて利便性を享受出来る「スマートシティ・スマート社会」が自由と民主主義と人権やプライバシーを尊重し、スマート社会が権威主義国の国家監視型にならないよう自由主義陣営の結束を図る提言を行うものです。

 さてかねてから技術流失について日本の対応の脆弱性が指摘されて来ました。企業や研究所や大学での機微技術の管理が無防備過ぎると言う指摘です。不正競争防止法等営業秘密の漏洩に対しては一定の措置を取っては来ましたが問題は大学や研究機関で他の先進国ではバックグラウンドチェックを必要とする機微技術研究に対し、日本には同様の制度が無いことです。管理すべき基礎研究や先端研究が同盟・友好国以外に渡れば日本の安全を脅かすことになります。更には漏洩防止制度の無い日本が研究からデカップリング(分断除外)される恐れも高まります。

 今回、東京大学の先端研では研究漏洩防止を目的とした「経済安全保障プログラム」を政府機関と連携して立ち上げました。漸く日本も、というところです。私も経済安保の関係者として助言します。日本の研究機関が自由民主陣営からデカップリングされない様研究成果の漏洩防止制度を早急に作るべきです。

 

 

今週の出来事「失敗は成功の母!」

 テレビ番組で若い未婚の女性ががん治療の為、卵子凍結保存に将来を託そうと考えたが、費用が高額で諦めたという報道を目にし、その対応策も(私が会長をやっている)不妊治療支援拡充議員連盟で取り上げようと思い、議員連盟幹事長の野田聖子さんにメールを送りました。

『未婚のがん患者の女性の、子どもを持つ夢を繋ぐために卵子凍結保存の費用も国が支援する仕組みを作ろうよ。』

 待てど暮らせど野田聖子さんから返事が来ません。おかしいなと思ってメールをチェックすると宛先は野田毅さんになっていました。平謝りでお詫びのメールを打ちましたが、後日国会内で顔を合わせた際「一体俺はどうすればいいのかと思ったよ。」と苦笑いをされました。

 まっ、いろんな人に知ってもらえることはいいことだよね。