国会リポート 第412号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

総 覧

 第99代内閣である菅(すが)政権が発足しました。安倍政権の政策を引き継ぐという宣言は即ち安倍政権で完成していない政策を仕上げるという事も意味します。経済政策、アベノミクスはその象徴です。なかでも、デジタル庁創設が注目されその担当大臣にわが党一、いや政界一のデジタル政策エキスパートである平井卓也氏が抜擢されました。IT担当としては二度目の就任になります。実は自民党内に於いてIT政策の司令塔、IT戦略特命委員会は平井卓也さんが委員長をして私が最高顧問をしております。デジタルの代表者とアナログの代表者の組み合わせです。「アナログ世代の私が理解できないようなデジタル政策の説明では国民の支持を得ることはできない。」私の口癖でそこから平井・甘利のタッグが組まれてきました。今までIT製品の調達を各省がバラバラに行い、重複や無駄が多々出ておりました。内閣府による一括調達システムに改め、各省はそれぞれ内閣府に申請し内閣府はそこで重複や無駄や欠損をチェックする。そのことによって調達コストは少なくとも1割は下がるはずです。これを提案し実行させたのもこのチームです。ひと月ほど前に平井さんから相談があり、日本政府のデジタル化の目詰まりの抜本的解決策をどう政府に受け入れさせたらよいのかの相談でありました。私から官房長官のところに直接行って、その構想を説明してきたらいい。彼が共感すれば一気に進むはずだとアドバイスをしました。長官室から帰ってきた彼から「私はこういうことをやりたかったんだ。」と官房長官から共感を頂きましたと嬉しそうな電話がかかって来ました。安倍総理にも「この担当大臣にはITの専門政治家を充てるべきです」と進言をしておきました。

 私が座長を務める新国際秩序創造戦略本部はコロナ禍を抜けた先に展開されるデジタル化した新たな国際社会がどういう理念に基づいたシステムで運営がなされるかの問題提起をし、我々の共通の価値観に基づくデジタルシステムが世界標準になるべきとの訴えを続けてきました。その本部の最初の問題提起はコロナパンデミックを通じて日本社会の脆弱性をあぶりだすことです。コロナを経てあぶりだされたことの一つは日本のデジタル化は個々別々のいわゆるタコツボ型デジタル化であって、タコツボ間の連携が全くできない、組織間連携の全くできない代物だったという事実です。省庁間連携が出来ない、国地方間連携が出来ない、個々別々のデジタル化です。デジタルデータを紙に打ち出し、その紙を別なシステムにデジタルで打ち込む。デジタル化のメリットは何も反映されていないものです。この原因は既に指摘させて頂いたようにベンダーロックインです。NECや富士通や日立等の納入事業者が個別の仕様のシステムを納入する限り、システム間連携は出来ません。これを打破するためにオープンアーキテクチュア、つまり各ベンダーに共通する基本設計が必要となります。次年度予算編成の基本方針いわゆる骨太方針に「ベンダーロックインを廃し」「オープンアーキテクチュアで進める」を記述させようとした際、今年の骨太はページ数を簡素化するので両方のフレーズを入れると一行増えてしまうのでどちらかを削ってほしいという珍問答がありました。原因と処方箋ですので片方だけ記載するというやり方はありません。力づくで2つのフレーズを入れさせました。

 総理から平井大臣への指示は可能な限り迅速にデジタル庁を発足せよというものです。相当のスピード感が必要です。平井大臣から党側の受け皿を担ってほしいとの要請がありました。税調会長としても忙しい年になりますし、新国際秩序創造戦略本部の取りまとめも年内ですが、さらにデジタル庁構想の党側責任者も務めるようになりそうです。

 

今週の出来事「ゴールドカード?」

 どこの家でもそうだと思いますが、我が家も孫に甘すぎると娘から叱られます。一緒に食事をし、帰る段になって「コンビニ行ってお菓子買いたい。」とぐずる孫に娘が「今日はダメって言ったでしょ。」と答えると「いいもん。じーじに買ってもらうから。」

 その4歳の孫が何かのイベントで会場で楽器を弾いている子供に「何歳?」と問いかけ、その少年が「12歳。」と答えると自分の歳では勝てないと思ったのか「うちのじーじは71だぞ。」と誇らしげに言ったそうです。

 なんの勝負?(笑)