国会リポート 第378号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。
※本記事の無断転載を固くお断り申し上げます。

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 いよいよ統一地方選挙と参議院の改選が重なる12年に1度の亥年選挙がスタートしました。地方選で目立つのは無投票当選選挙区の増大です。地方政治家という仕事に魅力がないのか、政治そのものに関心がないのか、投票率低下と合わせて深刻な問題です。生活満足度が上がっていくほど、つまり生活に不便を感じないほど政治への関心は薄れていきがちです。内閣府が毎年行う生活満足度調査で「満足している」「どちらかと言えば満足している」を合わせると、74%にのぼり、調査史上最高の数字になっています。また、都市部はともかく地方に行けば景気が悪いとよく言われますが、日銀の景況感DIつまり企業経営者に景気がいいと感じる人から景気が悪いと感じる人を除いた数値がプラスなら景況感(DI)はいいと判定しますが、全国各ブロックのDIは2013年12月以降ずっとプラスを続けています。儲かっている人は面と向かって儲かっているとは言わないものだとよく言われますが、世評と統計の差はその辺にあるのかもしれません。そうではあっても、地方自治は民主主義の根幹です。有権者が権利行使できない事態は避けなければなりません。

 それにしても、地方創生策が決め手を欠くとはよく指摘されます。地域の特産品をブランド化し、JETROと協力をして輸出振興をし、政権交代前4000億円程度だった農産品輸出はもうすぐ目標の1兆円に届こうとしています。従来型の政策のブラッシュアップは報道されていますが、進みつつある地方創生政策の中核が語られていません。私は大臣職にある時も、大臣職を離れた今日までも一貫して大学改革を指揮してきました。CSTI(総合科学技術イノベーション機構)を司令塔とし、文部科学省を巻き込んで今日まで続けています。日本全国の国立大学を:
(1)地方創生の核となる大学
(2)特色ある専門分野を生かして世界と繋がる大学
(3)最高の叡智が集まる世界のトップ大学と競争していく大学 この3分類に大学の意思も踏まえ収斂させています。その際、従来の文科省高等教育局のみならず、旧科学技術庁3局の予算と合わせて投入をしています。国立大学の3分類の(1)、つまり地方創生の核になる素晴らしい例がいくつも出現しています。例えば、青森の弘前大学はビッグデータ化している医療データを核として集積してきた企業群とともに短命県1位を返上すべく健康寿命延伸政策に取り組んでいます。また三重大学では参加企業が工場の排熱と木質バイオマス蒸気を利用した高品質トマトの栽培・販売を行っています。三重大学大学院が農業従事者を含め、ビジネススクールの役割を担ってIoT型農業に取り組んでいます。また伊勢神宮の参拝者を対象に商店が軒を連ねていますが、そこでは三重大学のAI(人工知能)が顔認識を行い、来訪者と物品購入の志向性を分析し、品揃えや商品配列や新商品開発に繋げています。また静岡大学は浜松に工学部が立地していますが、近接する浜松医科大学と連携を取り、将来の総合大学化を視野に医工連携に取り組んでいます。また近隣の光関連企業と連携をし、光産業の集積地を目指しています。

 根底には「大学を運営する」から「大学を経営する」へのトップの意識改革です。大学が持っているアセット(知的資産)を活用し、地域の人材や産業とコラボレーションする地域創生の核になる取り組みが全国で進みだしています。

 地方自治体がこうした地方創生策の発信をし、合わせて議員活動と育児とを両立させる環境整備し、女性議員の参入も促していかなければなりません。さらに言えば、政党の魅力も向上させる努力が必要です。

 

今週の出来事「(将来の)有権者は神様です?」

 先日、3歳になったばかりの孫の家に遊びに行きました。

「じーじ、遅いねぇ」と孫がつぶやいていた矢先に行ったものですから大喜び。しばらくプラレールで一緒に遊んでいましたが、程なくラジコンロボットに関心が移り、「こっちで遊ぶから、じーじ片付けといて」とラジコンで遊び始めました。母親(娘)に「自分で遊んだものは自分で片付けなさい」と2度に渡って叱られ、ようやく一緒に片付け始めました。

 今から国会議員をアゴで使うんだから相当強力な有権者になるんだろうなぁ(笑)。

 私?黙々と片付けました(笑)。