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それぞれの国(マカオや香港等地域を除く)の豊かさを示す指標で一番わかりやすいのは、一人当たりのGDPランキングです。アメリカドルに換算して比較しますからドル高ドル安の影響は受けますが、直近の順位は1位がルクセンブルク、2位がスイス、3位がノルウェーと続き、7位に米国、アジアNo.1のシンガポールは9位、日本は20位となります。
日本の労働生産性の低い原因にサービス産業の生産性の低さがあり、日本で380円のビッグマックはスイスでは750円、本家の米国でも585円。つまりサービスにどれだけ付加価値を付けられるかということも一人当たりGDPを構成する大きな要素です。
「サービスしときますよ」は日本語では安くするという意味合いがあるように、サービス産業に付加価値付けができないことも原因の一つです。もちろん、高いサービスを受けられるだけの高い賃金は当然のことです。今、政府では小売をはじめ、運輸・宿泊・介護等、生産性の低い5業種の生産性を引き上げるための生産性改革という作業をしていますが、5業種に更なるサービス産業を追加して生産性を上げるための好事例の開発、その横展開に精力的に取り組んでいます。しかし何と言っても死活的重要性は、産業全体が生産性の低い部門から生産性の高い部門にいかにスピーディーに乗り換えることができるかということです。生産性の低い古い事業部門を切り捨て、付加価値の高い部門へといかに人材・資金等経営資源をスピーディーに移動できるかということです。
日本経済全体の断捨離が必要です。日本の企業は新しい取り組みに果敢に挑戦することができても、古い部門を切り捨てることは不得手と言われています。つまり、いくら稼ぎ頭を作っても足を引っ張る部門を抱え続けては、そこにコストを喰われ、企業全体の、総じては産業全体の競争力が確保できないのです。
生産性の高い国に比べて、日本の労働市場の最大の問題は古い部門から新しい部門にスピーディーに人の移動ができないということです。数年前、デンマークを訪れた時に現地日本企業の責任者と話をしましたが、「経営が思わしくなく、その部門を閉めることになり、現地社員をレイオフしなければならなくなりました。断腸の思いで彼らに通告をしたら休暇をもらえたかのようにケロッとしていて、こちらが拍子抜けでした。
世界一労働福祉政策が充実しているため、北欧ではレイオフは想像以上に簡単にできるということです。失業保険は充実しており、解雇された労働者にとっては次の職を探すための充電期間の捉え方のようです。生産性のカギは労働移動の容易さにあります。いつまでも古い体制にしがみついているのが日本の労働法制。迅速に労働移動が可能なのが生産性の高い国の労働法制です。要は生産性の低いところから生産性の高いところにどう迅速に労働力移動することができるかです。もちろん、新しい職場に適合したスキルをその間に身に着ける体制ができていなければなりませんし、中途採用の慣行ができなければなりません。
終身雇用・年功賃金の労働体制は個人のライフプランには安定と予見可能性(住宅ローン設計等)をもたらしますが、産業全体が硬直化をして国際競争に敗れ沈没すれば全滅です。働き方改革は工場のラインに何時間座ってなんぼという労働法制から脱することです。裁量労働制も高度プロフェッショナル制度も種々の現象をもって全体を否定するのではなく、時代の変化にどう労働法制を付いていかせるかの視点が必要です。みんな平等に貧乏になろうでは成長戦略とは言えません。