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TPP11が完全合意に至り、3月8日にチリで署名式という段取りが整いました。まさに通商交渉史上に残る快挙です。TPP11はTPP12のほぼ全てを踏襲したもので、将来アメリカが復帰した場合に備えその取り分だけ空けておくというものであり、ルールについてもアメリカの要求で設定した部分はアメリカが参加するまで凍結するという方式ですので、新協定は7つの条文からなる簡単なものです。関税等はTPP12から一切の変更も認めず、ルールのみ22項目をアメリカ復帰まで凍結をしました。例えばFedExが要求していた急送少額貨物の免税基準額に関する見直しとか投資した企業が約束違反の相手政府の行為を訴えるISDSの一部とか医薬品や生物製剤のデータの保護期間の延長とか著作権保護期間の延長等です。
ベトナムが要求していた労働のILO条約との整合性はサイドレターで対応するという事で折り合いがついていましたが、最後まで揉めたのがカナダの文化例外でした。カナダのケベック州はフランス語文化圏で何かと独自性を主張しています。独立運動が懸念されたこともあり歴代首相は何かと気を遣います。そこで、ケベック州の文化を尊重し他国からの映画・音楽著作物等に一定の制約をかける余地を残したいというものです。他の国の要求は、元の条約(TPP12)を変更する必要はなく部分凍結しておき、アメリカが参加した時点で凍結解除するというものですから単純作業です。カナダの主張の様に元の条約を変更するという事になれば、各国からそれならば我が国もということになりかねず、収拾がつかなくなります。また、カナダは現在行っている米国とのNAFTA(北米自由貿易協定)がTPP11プラス、つまりTPP11を基準として、それからさらに譲歩を迫られることを警戒して妥結に躊躇していたとも言われています。
ASEANの4か国がTPP11の妥結を決断した理由は
1)
貿易量の拡大や外国からの投資を呼び込む事になりアメリカ抜きでもかなりの経済効果が認められる。
2)これを契機に国内経済改革に踏み込む。
3)各国が連携して中国の圧力に対抗できる。
の3点です。中国は1ヶ国ずつ個別撃破をしかけ、先ず経済援助で誘い、次に中国方式を押し込むというやり方です。各国にニュートラルで公正透明な共通ルールで貿易や投資が行われることが必須です。 先週、2泊3日でシンガポールに行ってきました。日経新聞とフィナンシャルタイムスが主催する経済フォーラムでの講演依頼を受けての訪星です。そこでは
1)総裁選の行方
2)アベノミクスの全体像と現在位置
3)TPPの果たす役割について講演しました。
一帯一路政策を進める中国は、外国資本が中国国内投資をする際の条件として、技術移転やソフトプログラムのソースコード(設計図面)の開示を要求しています。さらには中国国有企業と競合する外国民間企業とのイコールフッティング(競争条件を同等にする)にも後ろ向きです。サイバーセキュリティ法を盾に外資の電子商取引にサーバーの中国国内設置義務等をかけたり、自由化に様々な制約をかけています。それがアジア全体、中東アフリカに広がっていけば外資は手足を縛られた戦いを余儀なくされます。 TPPは、公正なルールの下に内外のイコールフッティングを図っていく世界最高の公正透明なルールです。今後参加国が増えるにしたがって、日米が作ったルールが世界標準へとなっていきます。