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これから年末に向けては経済絡みの重要な判断がいくつか続きます。まず10月の25~27日までオーストラリア・シドニーでのTPP12カ国担当大臣会合が開かれます。これはオバマ大統領が掲げた11月大筋合意を念頭に置くと失敗は許されないイベントとなります。先般の日米事務レベル交渉はかなりの前進がありました。しかしまだそれぞれが決着しているわけでなく、また重要な案件もまだ残っています。先行してシドニー入りする事務方メンバーが政治判断が必要となるもの以外、大筋決着をしておかなければなりません。併せて日米の行方を見ながらたたずんでいたその他の国々は交渉を加速しなければなりません。特に知財の保護のあり方、国有企業の規律、環境ルール等いわゆるルール分野は、まだ相当の進捗を必要とします。
11月に入りますと17日のGDP7-9月期一次速報値の発表を挟んで、アベノミクスの現下の経済状況を検証する「経済状況点検有識者会合」が数日間に渡って開催をされます。7-8月に大型台風や集中豪雨が連続して発生した影響も加味すれば、7-9月期の経済状況は力強い回復とまでにはいかないようです。仮に9月が相当にいい数値でない限り、「消費税の判断とは切り離し」、経済回復軌道へのテコ入れ対策の判断をしなければなりません。さらに消費税引き上げ判断自体は12月までに行うとしておりますが、予算編成との絡みが出てきますし、党内手続きを巡って党政調会や党税調と平仄を合わせていかなければなりません。予算編成を越年させないためには、消費税判断はなるべく早くした方が良さそうです。
併せて年内に「まち・ひと・しごと創生本部」の施策取りまとめをしなければなりません。産業競争力会議と違って、創生本部はテーマ毎の分科会構成にはなっておらず、12月中という期間を考えれば、産業競争力会議が具体的なタマ込めを相当手伝わなければならないと思います。地方創生には二つの視点があります。一つは、アベノミクスの効果を全国津々浦々に均霑をさせること。二点目は、地域独自のポテンシャルを引き出すことです。
IR(インテグレイテッド・リゾート、カジノを中核とした統合型リゾート)で観光客誘致に大成功したシンガポールのリー・シェンロン首相と面会した日本の財界人は「IRで観光誘致は大成功ですね。」と、問いかけると「いや、日本には敵いません。」「それはなぜですか?」「シンガポールには温泉がありませんから。」日本全国に散在する温泉は外国から見れば観光立国の羨ましいインフラのようです。
農林漁業と云う、一次産業の『産業化』やサービス産業の情報化は必須ですが、温泉や世界遺産そして、景観やおもてなし等日本人が当たり前に思っている地方の風景は、地域振興の大変な要素になることを外国人が教えてくれます。日本人はもっと自信を持っていいと思います。