国会リポート 第294号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

国会閉会中の時間を利用して一週間程、海外出張をしてきました。公務ではありますが、国会が休みでもあり、少しは落ち着いた日程となるかと思いきや、案の定、今回も朝6時~7時にはホテルを出て、戻りは夜の11時というタイトな日程になってしまいました。

ドイツとイタリアとUAEを駆け足で廻ってきましたが、ドイツは今私が提案している「イノベーション・ナショナルシステム」、つまり大学や大学院で行っている基礎研究から世の中を変革するようなシーズ、つまり新製品や新サービスの種を見出し、それを企業の実用化へと繋げていくシステムですが、その構築のための参考としているドイツのシステムで大学の基礎研究と企業の実用化とを繋いでいく橋渡し研究機関であるフランホーファー協会(社団法人の応用研究機関)を視察してきました。

本部で一時間半、研究所で一時間半、連携を取る大学で一時間、合計4時間を無駄なく使えるように逐語通訳ではなく、同時通訳でやってもらいました。大学と社団法人との連携はどういう形で取るのか、そして企業との関係はどう繋げていくのか、企業から具体的な研究開発の依頼があるのか、それとも研究開発テーマを企業に売り込んでいくのか、訪問団から矢継ぎ早の質問が飛びましたが、とても時間が足りません。帰国した後に関係省庁や中核となる産業技術総合研究所のスタッフを2~3週間泊まりこみで派遣する指示を致しました。

イタリアは7月から半年間EUの議長国になります。会談をしたパドワン経済財政大臣もEUの大臣になるようです。アベノミクスの説明に興味深く聞き入っていましたが、金融政策の結果による円安が成長の何割に影響を与えているのか等々、元OECDの役員であったことを思わせる専門的な質問もいくつも受けました。金融政策は成長戦略というよりも20年間続いたデフレの環境を弱インフレの正常な経済環境に戻すために必要な手段であり、その上に初めて成長戦略は実効性を発揮すると説明すると、専門家らしくすぐに理解をしました。日・EU経済連携協定についても協力を要請すると、EUの大臣にもなるのでと快諾を頂きました。

実はイタリアはそもそも7月にベネチア国際大学でアベノミクスの講演を学長から依頼されていましたが、こちらの都合で延び延びになってしまい、行けるようになった時には大学が夏休みに入ってしまいました。学長からの熱心なお誘いで日曜日を利用してキャンパスを視察してきました。小さな島全体がキャンパスになっており、校舎は歴史的建造物を内装を変えてそのまま利用していました。世界数カ国10以上の大学と協約を結び、前期・後期単位で学生の交流が行われています。学長が大変な日本びいきでキャンパスに日本庭園と茶室を作りたい、スペースはここです。と案内されましたが、スポンサーが決まってないようです。我こそはという方があれば是非ご連絡をください。

UAEは今や世界のハブになっており医療協力と装置型医療機器の売り込みを日本が行っているところです。私の出張に合わせて大腸がん内視鏡手術の世界の第一人者、昭和大学の工藤教授にタワム病院で検診のデモンストレーションを行っていただきました。しかし、ここでもアメリカの大学が大規模な病院を作り、医療ツーリズムの拠点としています。

UAEでムハンマド皇太子との会談を申し入れておりましたが、海外出張中のため、弟であるアブダッラー外務大臣が一時間に渡って対応を頂きました。実はUAEのGDPの6割を占めているアブダビ首長国では7~8年前より日本人学校でアブダビ政府高官の子弟を一部受け入れています。これが大好評で中学までは受け入れが可能ですが、日本の高校がなく日本への高校留学が検討されています。将来の政府高官になるであろう子どもたちの受け入れは是非進めるべきで、中東のハブであるUAEの政府高官が日本語ペラペラであるなら外交政策上も素晴らしいことです。

今週の出来事「すきやばし太郎」

先般、麻生副総理に大臣数名がすきやばし次郎へ連れて行ってもらいました。安倍総理がオバマ大統領と寿司屋会談を行って以来、さらに予約が取りづらくなったようです。

話題になった後、田村厚労大臣が

「すきやばし次郎ってどんなとこですか?」

と聞いたのがきっかけで、傍にいた数人がお相伴に預かることになりました。 

 

「世界銀行の総裁からすきやばし次郎に行きたいんだけど予約が取れないのでと依頼があったけど、前に問い合わせあったか?」

との麻生副総理の問いに、大将が

「世界銀行だか何銀行だかから電話はありましたけど上から目線だったので忙しいからと断っちゃいました。」

「あ~あ。どうせ怪しげな金融業者かなんかと間違えたんだろ(笑)。」

 

世銀が金融業者?さすが、すききらい次郎(笑)。