国会リポート 第290号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

中越(中国・ベトナム)間で領有権を争っている南シナ海で中国公船がベトナム漁船に体当りさせるショッキングな映像が流れました。数年前日本の海上保安庁の巡視船に体当たりをして来た行為を彷彿とさせます。中国側が例によって相手の方が当たってきたと責任転嫁をしたため、業を煮やしたベトナム側が映像を公開した模様です。

大国・中国に対してASEAN諸国が正面から非難をするのは相当勇気がいることですが、ベトナムのズン首相は毅然たる姿勢で抗議をしたためにかえって国内での人気は上がったようです。フィリピンは米軍がスービック基地から撤退するや直ちにそれまで実効支配をしていた岩礁を乗っ取られてしまった経緯もあり厳しい抗議をしていますが、ASEANの多くは圧倒的軍事力の差と中国経済への依存度が高いが故に内なる不満を公にすることには慎重のようです。

海外出張をするたびに痛感するのは中国や韓国に比べて日本の国際放送における発信力の弱さです。中国、韓国が数チャンネルを使って自国の素晴らしさを巧妙にアピールしているのに、NHKの国際放送はまるで自らネガティブキャンペーンをしているかのようです。中国はCNNの放送かと見間違えるような構成とキャスターの布陣を敷き、ニュース報道の中で中国の正当性を巧みに織り込んでいく巧妙な対応をしている一方、NHK国際放送は相変わらず津波被害や原発事故のビデオを繰り返し報道しています。

もうそろそろ復興に向かう被災地の逞しい姿やアベノミクスの明るい希望を報じてもいいと思いますが、ダメな日本、正しい中国・韓国のような印象を与えるのはいかがなものかと思います。どこかの国と違ってNHKに政府広報の役目をせよというつもりはありませんが、日本の前向きな姿と魅力が海外に発信をされることが本来の使命のはずです。NHKは日本紀行を始めとする素晴らしいコンテンツをアーカイブとして世界のどの放送局より所有しているはずです。著作権をクリアし、日本の魅力を世界に向けて発信することはかねてから要請されているはずですが、自虐的な発信しかしていないのはいかがなものかと思います。

昨年度補正予算でコンテンツ基金を作ったのはボランタリーに日本の魅力を現地放送枠を使い発信している民間チャンネルを支援する意味もあります。昨年一年間で外国から日本への来訪者数はついに目標の一千万人を超えました。アベノミクスの一環として東南アジアにおけるビザ要件の緩和を行ったことが主因ですが、東南アジアに民間放送局が流している日本紀行のような地域の観光スポットを紹介する番組が日本への観光ブームを呼んでいると聞いています。日本を訪れた人は日本人の気配りと親切なおもてなし文化に触れ、中国が宣伝している日本像との落差に驚き、日本に対する正しい評価を持って帰国をするようです。

本当の日本に触れてもらうために日本の素晴らしさをアピールすることが日本の国際放送の大きな使命の一つであるはずです。正しい日本像が世界で共有され、誤解を解くという努力を日本を挙げて取り組んでいかなければなりません。公共放送がその使命を果たせないとするなら民間放送をエンカレッジする対応はますます重要になってきます。私がコンテンツ基金の応援をしたのはシンガポール訪問時にハロージャパンという民間のチャンネルが少ない資金で孤軍奮闘し、日本の魅力を発信している姿を見たからです。スタッフ全員が日本の素晴らしさを何とか届けたいと頑張っている姿に触発をされました。

選挙区にサンリオの関連会社があるため海外出張する度に寄贈されたハローキティグッズを持参し、会談相手に贈ります。国際的人気度抜群で一気に場が和みます。「うちには娘が3人いるんですけど…。」と追加を要求する大臣やら、すっかりパパの顔に。それやこれや日本のコンテンツの力を外交や経済の推進に使わない手はありません。

今週の出来事「茂木エグゼンプション?」

定例記者会見で、産業競争力会議の中で民間側から提案のあった『時間にとらわれない働き方』について質問が殺到しました。

「朝の得意な人もいれば夜の得意な人もいるでしょう。安倍内閣でいえば茂木大臣は朝は苦手ですが、夜中12時を過ぎると絶好調ですから。」

と発言したら、ネットで見ていた視聴者から

「朝からちゃんと働け!」

「夜中にテンパってどうするんだ!」

というメールが茂木大臣に殺到。

何が起きたのかわからずパニクった茂木氏が事の顛末を知って、翌日の閣議で

「ひどいじゃないですか。訳もわからないのに、メールがいっぱい来て、大変でしたよ(笑)。」

誤解がないように言いますが、茂木大臣は過去一度も閣議に遅刻したことはありません。

茂木大臣の到着を確認して総理が入室しますから(ウソ)(笑)。