総 覧
3月28日に国家戦略特区の対象地区が決定致しました。
1)国際ビジネス、イノベーションの拠点として東京都・神奈川県の全部または一部プラス千葉県成田市
2)医療等イノベーション拠点、チャレンジ人材支援としての大阪府・兵庫県・京都府の全部または一部
3)大規模農業の改革拠点としての新潟市
4)中山間地農業の改革拠点としての兵庫県養父市
5)創業のための雇用改革拠点としての福岡市
6)国際観光拠点としての沖縄県、の6カ所です。
東京圏と関西圏に全部または一部と付してあるのはコンセプトに沿って市単位で絞り込んだ方がいいという意見と全県を網羅すべきだという意見に分かれたためです。総理は新たな提案があれば追加指定を検討する考えも示されました。私は都府県全体の網掛けよりも市単位で絞り込むべきだと思います。合わせて追加指定は闇雲にするべきではなく、この6カ所がきちんと成果を上げるまではこの地域にエネルギーを集中すべきだと思います。次から次へと特区を指定し、「どこでも特区」状態にしてしまった結果、「名ばかり特区」状態になってしまいかねない過去の反省に鑑み、戦略特区はなんとしても成功に導くべきです。国家戦略特区はそのコンセプトに従って産業の集積を図り、そのコンセプトによる産業集積の質・量の高さでは世界の五指に入る地域を作る。以って日本経済全体を牽引する、という理念でスタートしたからです。
日本より国土面積の小さなオランダがアメリカに次ぐ世界第2位の農産品輸出大国として発展したのは、ワーヘニンゲン大学の研究室を中核として食品産業の研究所が集積し、大学と企業とのコラボレーションから共同研究組合のようなものができ、そこが行政を巻き込み、産官学のコラボレーションへと発展をしていったからです。日本では自然発生的な集積を待つのではなく、産学官の連携と集積を人為的に仕掛け、強力な規制改革の実践場としていきたいと考えています。
国家戦略特区は産学が連携し、そのコンセプトを達成するためのあらゆる障害の除去を規制官庁に働き掛けていくということをスタートとします。世の中にある規制はそもそも安全や安心や公正のために設定されたものです。しかし、やがてそれが本来の趣旨を離れ、行政の権威を示すだけのものになってしまってはいないか。戦略特区の規制改革要望は既得権益に対する挑戦でありますが、それは時代の変化を踏まえ、より高効率なものへと転換を迫る行為でもあります。
さて新年度予算が3月20日に成立をし、焦点は重要法案の審議と集団的自衛権の議論に移っています。集団的自衛権とは自国と密接な関係にある他の国が武力攻撃を受けた際に、その国と協力して共同で防衛を行う行為で、国際法上の権利とされています。従来、日本の政府見解は主権国家たる日本は当然国際法上の権利は有しているが、憲法によりその行使は制約されているというものでした。自衛権と憲法の関係について最高裁が直接言及したものは1959年の砂川事件判決です。国家の主権を守るために必要な自衛のための措置は独立国である以上、当然に認められるというもので、「必要最小限なもの」とも「集団的自衛権は枠外」とも言及されていません。自国の存立を守るために必要な範囲が何かということです。
総理が時代の変化により今やどの国も一国では、自国の平和と安全を守ることは出来ないと言っているのは、日本の存立を守るための必要な抑止力としての枠組みを模索したいということではないでしょうか。防衛力とは攻撃を跳ね返す能力である以上に攻撃を思い留まらせる能力なのです。平和はそれを維持するための力が要求されます。