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政治経済の分野で国際的な新年幕開けをするのは世界経済フォーラムが主催するダボス会議です。スイスの田舎町・ダボスはこのシーズン、世界中の政治家・経済人・学者が集まります。創設者シュワブ博士が始めた世界で最も成功した国際会議イベントです。
その年のトレンドに乗り遅れまいとする世界中の数千社の企業は数百万円から数千万円を払って会員登録をし、会議に参加するそうです。この種のビジネスとしては最も成功した例でありますし、スイスへの経済効果も絶大です。警備に当たるスイス軍にとっては最高の訓練になるとも言われています。何千人もがひとつの建物に集まるので足の踏み場もない混雑。会議の合間にバイ会談の部屋を確保するのも一苦労。こんなに金を集めているのに何とかならないのかという声があちこちから聞こえます。
さて今年の主役は安倍総理でした。大会のメインイベント、キーノートスピーチを見事にこなされました。メイン会場は各国首脳や著名な学者・経済人で満杯。講演が終わるや万雷の拍手に包まれました。昨年のキーノートスピーカーはドイツのメルケル首相でした。しかしそれ以上に世界の興味はアベノミクスに向かっておりました。総理の名代として出席した私は会議中盤のメインのディスカッションにパネリストとして参加し、アベノミクスが何を目指すのかに熱弁をふるいました。後日、その場面がダボス会議最大の注目点だったと評してくれたように昨年はアベノミクスが主役、そして今年はその当事者、安倍晋三首相が主役でした。ダボス会議の数十年に渡る歴史の中で日本の首相がキーノートスピーチをしたのは初めてです。アベノミクスも2年目に入り、第一の矢の金融政策、第二の矢の財政政策は高い評価を受け、いよいよ本丸・第三の矢の成長戦略の真価が問われているところです。アベノミクスに疑心暗鬼も加わる昨今、その不安を払拭するにふさわしい総理の名演説でした。日本の経済指標はほぼすべて好転をしています。経済成長率は4四半期連続でプラスになり、有効求人倍率は6年ぶりに1に達し、中小企業非製造業の業況判断がプラスに転じるのは実に22年ぶりです。
昨年末の臨時国会で産業競争力強化法や国家戦略特区法をはじめとする9本の成長戦略関連法案が成立を致しました。それを受けて成長戦略実行計画を閣議決定しました。すなわち何をいつまでに、誰が責任を持ってやるということを明示した成長戦略実行工程管理計画です。
今国会に提出される全法案の約4割に当る約30本がアベノミクスの第三の矢・成長戦略を実行していくための法律です。企業の研究開発促進のための減税、最新の設備に更新するための減税、ベンチャーの資金調達の手立てのための法律、企業の収益を賃金向上へと向かわせるための仕組み、育児休業給付を2分の1から3分の2に引き上げるための法律、国の科学技術の司令塔を作るために権限を集中させ独自の調整予算を持つための法律、医薬品や医療機器の開発を官民一体で迅速に行うためのシステムを作るための法律等々盛りだくさんです。いままでの成長戦略は策定した時がゴールとなってしまいましたが、アベノミクスの成長戦略は策定した時から厳しい工程管理の目を光らせる。つまりそこからがスタートと言われる所以です。
合わせて年央の成長戦略進化のための改定に向けての作業も同時進行しています。そこには社会保障を充実させながら多様な働き方が可能となる制度改革、農業を新たなフロンティアとさせるための農協や農業委員会のあらまほしき姿、いくつもの関連会社を束ねるホールディングカンパニーのように医療法人や社会福祉法人を束ねる非営利型ホールディングカンパニー制度等々、さらなる検討が進んでいきます。