国会リポート 第269号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何が起きているのか解りやすく解説しています。

総 覧

皆様にご支援を頂いたお陰様で、自民党が大勝することができました。悲願の「衆参のねじれの解消」も公明党と合わせて達成することができました。心から感謝を申し上げます。 
それにしても選挙は甘くない、と痛感いたしましたのは、マスコミが予測する自民党の当選者数の下限であったことです。事前調査よりもかなり追い込まれた選挙区も見受けられました。比例区当選者数も予測下限値でした。謙虚に受け止めて、安倍政権は再スタートいたします。

衆参ねじれ、つまり政権与党が参議院で過半数を持てないということは、物事を主体的に決めていくということが出来ず、政策の推進スピードが落ちていきます。日本の現状は「時間との闘い」であるだけに、この時期に「決めることが出来る体制」を作って頂いたことは日本にとっての光明になると思います。8月2日から開かれると言われている臨時国会は、基本的には新しい議員による国会内の議席や部屋の配置や議長をはじめとする国会人事改選が主たる目的ですが、場合によっては前国会で廃案ないし未成立の法案も与野党の協議によっては議案になるかもしれません。今後の日程はTPP、成長戦略推進体制、消費税引き上げ判断と懸案事項が目白押しです。それと、人事。この点は頻繁に質問を受けますが、これは総理の専権事項であり、推測も含めて余計な事は言わない方がいいと思います。

さて、昨日TPPの鶴岡首席交渉官と佐々木国内調整総括官らがTPP会合への出発の挨拶に来ました。TPPはアジア太平洋に新しい通商ルールを作るものであり、成長戦略の柱の一つです。世界第3の経済大国にふさわしい交渉力を発揮し、まずは情報格差を埋め、日本がかかわる重要項目で何が妥結し何が未解決なのかを一刻も早く把握し、他国の交渉チームに交渉レベルを同調させることです。選挙中、地方を回って痛感したことは、農業は守るばかりではなく、攻めることの必要性を農業者自身が強く感じているということでした。背水の陣を敷いて市場開拓戦略をつくり、ブランド戦略や広報戦略を品質向上戦略ともども取り組んでいくことが重要です。

そういえば、地方区の応援に回った先で、農協や漁協で集まった人たちを前に街頭演説をする機会がしばしばありました。TPP反対の垂れ幕がかけてある前でTPP担当大臣が演説をするのも奇異な映像ですが、決まって最後は大拍手でした。

さて、消費税引き上げの判断は、各種経済指標を見ながら総合的に判断することになりますが、4月から6月の成長率の2次改定値までにはいろいろとシミュレーションをしておく必要があります。今後、過去の消費税導入の際の反動減や回復力の強弱を綿密に調査し、しっかりとした対策を用意する設計が必要となります。特に過去の導入時、竹下内閣の時にはレベニュー(歳入)マイナスつまり、増税分を超える減税をしましたし、景気回復を見誤った橋本内閣の時でさえ税率引き上げはレベニューニュートラル、つまり増減税同額でありました。今回はレベニュープラス、つまり増税分の方が多い消費税引き上げとなりますので、下支え対策は相当綿密に設計しなければなりません。ここは、私の腕の見せ所となりそうです。今後2、3年先を見据えた消費税導入による経済リスクと対応策を英知を結集して綿密にシミュレートし、設計していく必要が迫られます。いずれにしても、まずはデフレを脱却すること、その上で財政再建の道筋を示すこと、そして、物価上昇を上回る賃金上昇のタイムラグをできるだけ短くしていくことが課題です。

 

今週の出来事「大臣?ん車」

内閣府の大臣の間では、更新時期(12年!)の来た大臣車にワンボックスカーを採用することが流行っています。いきおい、各大臣車は番号続きのナンバープレートになり、どれが自分の車か見分けるのが大変です。

先般、官房長官から

「甘利さん、ワンボックスカーってどうですか?私もそれにしようと思うんですが。」

「うん、結構便利だよ。菅ちゃんや俺は他の大臣より秘書官が多いし、まとめて乗れるからいいんじゃないの?」

ということで、官房長官の車もワンボックスカーになりました。私の所掌範囲は多岐にわたっておりますので、4省庁から事務の秘書官が派遣されております。私とSPが乗っても4席残っていますから、何かと都合がいい訳です。

TPP担当を総理から命ぜられたときに、

「外務省からも秘書官を送り込みたいと言われたらどうしますか?」

と聞かれ、

「冗談じゃないよ。これ以上増えたら車に乗りきれない。誰か一人は自転車でついてくることになるぞ。」 

 

いや、大臣以下、全員自転車ってのもいいかなぁ、健康的で。でも雨の日もあるし・・・。

よしっ!次はマイクロバスだ(笑)。