総 覧
昨夜未明までペルーのリマで開かれていたTPP会合が終了し、かねてから報道されていました次回会合の日程が7月15日から25日までマレーシアでと正式に決まりました。
この会合において日本は「意味のある形で実質的に参加ができる」こととなりました。私もかねてからセレモニー参加ではなく、実質交渉参加が出来るよう取り計らってもらいたい旨、関係各国に要請してきました。「意味のある形」とは、今日までの情報を共有した上で日本が参加国とバイ(2国間)・プルリ(2国間以上の複数国間)・マルチ(全体)の各レベルで議論が出来るということを意味します。
アメリカの議会手続きが予定通り終われば、23日午後から交渉参加が可能となるはずです。参加後、直ちに今日までの交渉成果と課題を共有し、日本の主張を交えて具体的な交渉が正式にスタートします。
植物検疫や原産地規則等6分野では進展が確認をされたようですが、我が国が獲得すべき知財分野等では課題が残り、国内の関心の高い物品関税、政府調達等では正に交渉はこれからのようです。
現地取材をしてきたマスコミからの連絡によれば、終了後の記者会見も各交渉国間は牽制し合い、ピリピリと緊張感の漂うものであったようです。
太平洋を内海として周辺国がモノ・サービス・資本を自由に行き来させるということは、それ自体素晴らしいものですが、各国の事情に配慮しつつ東アジア全体にこの恩恵を進展させていくことが関係国の便益を拡大していきます。
先般来日したシンガポールのリー・シェンロン首相もTPPはTPPで終わらせることなく東アジア全体の経済連携RCEPと繋いでいくことにその意義があると述べていました。
日本が為すべき役割は東アジア地域とTPPとの落差を埋めていくことにありますが、何よりもアメリカにそのことを理解させるべきだと思います。そのリー・シェンロン首相は3週間前の政策演説の中でシンガポールの生産性はまだまだ遅れを取っている。先行する日本の7割でしかない。とハッパを掛けました。
実はこれは逆で日本の生産性がシンガポールの7割に成り下がってしまったということが正確だと思いますが、「休んでしまった時にシンガポールはその命脈を断たれる」と背水の陣を迫る同首相の姿勢こそ日本が見習うべき姿です。
政府が何かをしてくれるだろうではなく、自分たちがやるのだという決意をすることが何より大切だということをリー・シェンロン演説は教えてくれます。
経済財政諮問会議でも麻生副総理が「政府は環境整備はしますが、実際にやるのはあなたたち民間なんです。」と民間企業代表委員に迫っていたのは、まさに真理と言えます。
アベノミクスは3つから構成されています。
1.異次元の金融政策。
2.異次元の財政政策。
3.異次元の成長戦略。
そしてその成長戦略も3部構成になっています。
1.日本の立地競争力の異次元の強化。
2.新たな成長市場の異次元の創出。
3.国際展開の為の異次元の環境整備。
総理は過去2回アベノミクスに関する政策演説を行いました。6月5日に行われる3回目の政策演説に間に合うように主要部分を取りまとめたいと考えています。そして6月中旬、サミット出席までに全体をまとめたいと思います。同時に日本から「新しい資本主義市場経済のあり方」を発信していきたいと思っています。短期の投資で利益をかすめ取るような資本主義ではなく、イノベーションを引き起こす中長期の投資を引きつける資本主義です。それは本来、市場が持っていたはずの機能を取り戻すための提言となるはずです。