総 覧
今週が今国会最大のヤマ場となりそうです。
みんなの党の渡辺代表は消費税増税を阻止するという理由で内閣不信任案の提出を各党に呼び掛けました。
社民党や共産党は元々消費税増税に反対していますから、直ちにこれに同調しましたが、それだけでは提出要件の数を満たさず、小沢一郎新党党首に呼び掛け、要件を満たしました。
この曲球は自民・公明にとって慎重な対応が必要となります。解散に追い込むという点に関して言えば、民主党内の不満分子の造反可能性と相まって解散への相当なプレッシャーになりますが、一体改革の修正合意をした当事者としては、自分で自分を否定することにもなりかねません。
かと言って、野田内閣自身を信任するような行為に出れば、ますます解散戦略は袋小路に入ります。
そこで執行部は一体改革に反対する理由とは別の民主党政府の不誠実さに対し、不信任を突きつけるという選択肢を用意することになりそうです。
ここで野田内閣が取るべき対応は、自公に対し党首会談を呼び掛け、一体改革法案成立への協力と成立後の解散を約束することです。
野田総理自身は代表選再選後の 10月解散には前向きとの観測も流れていますが、ひたすら来年のダブル選挙まで引っ張ろうとする輿石幹事長に指導力を発揮できず、その結果騙され続けてきた谷垣総裁としては強硬姿勢を取らざるを得ません。
法案を提出した与党が成立の引き延ばしを図り、野党が成立のスケジュールを心配するという前代未聞の事態は、責任政党という呪縛から野党になりきれない自民党と、今だに与党としての自覚も責任もない民主党とを象徴している出来事です。
先般、国際通貨基金 IMF が日本を名指しで「消費税引き上げ・財政再建への行動が取れないようなら、日本国債は突然暴落する危険性と隣合わせになる」と警告を発しました。「ギリシャ・イタリア・スペインの次は日本だぞ」との警告です。
引き上げ反対派は無責任に「その前にやることがある」とカビの生えたポピュリズム大衆迎合を発しています。無駄を省くということは「その前に」ではなく、「常時」やるべきことなのです。
先の選挙時の公約で民主党は、子ども手当てや 農業補助金や高速道路無料化や高校無償化に掛かる費用 16兆 8000億円は、増税に頼らずすべて無駄をなくして捻出すると約束しましたが、結局内部留保まで取り崩しあらゆることをやった結果がせいぜい 1兆円 (民主党は 3兆円と主張していますが削った振りをして次の予算で埋め戻す等の欺瞞を精査すればこの程度の額です。) でした。
民主党内で平然と消費税引き上げ法案に反対し、「その前にやることがある」と言っている議員には、「その前に公約通り無駄を省いて見せてみろ!」という言葉を贈りたいと思います。
ただし、私がかねてから警告している通り景気後退下の歳出削減は、財政再建と財政縮小の追いかけっこになり、悪魔のシナリオになる危険性があります。財政再建の際には確かな経済成長戦略が必要です。
ここでも民主党政府は間違いを犯しています。従来型成長戦略の焼き直しではなく、企業も国家も経済モデルの再構築、ビジネスモデルの再構築を図るべきなのです。
日本は戦後から今日まで言わば新興国型成長モデルでやってきました。高齢化社会になり、労働力人口が減っていき、資本蓄積も取り崩されつつある成熟国になった今、60年間続いてきた国家経済モデル、成長モデルの書き換えをしなければなりません。
国内外の資本還流の最適化を図り、GNI を最大化する。海外事業投資と国内知財創出とがシナジー効果を発揮する新しい経済モデルの創出です。科学技術政策の司令塔機能を権限、予算を含め再構築し、新たな技術やサービスは常に日本から輩出されるという経済モデルを構築しなければなりません。