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「私の方から提案があります。震災後の復興には膨大な量のがれき処理が広範に進むことが必要です。全国の自治体は支援の手を挙げていますが、色々な制約があって思うように進んでいません。ここは、国がもっと前面に立ってがれき処理に責任を持つ体制が必要だと思います。」
党首討論の冒頭、谷垣禎一総裁が野田佳彦総理に提案し、総理はこれを快諾いたしました。建設的な議論に乏しいと批判をされてきた党首討論で、初めて建設的な合意がなされたと評価されています。
実は神奈川県でも黒岩祐治知事が「東京に続け!」とばかりに、がれき処理の受け入れを提案いたしました。県内の横浜市・川崎市・相模原市の焼却場で処理し、焼却灰を横須賀市の最終処分場で受け入れるというスキームです。
横須賀市の最終処分場は 10年間にわたる地元との調整のうえにようやく建設された難物であり、県内廃棄物に限るという地元との協定も結ばれています。
全国から運動家が大挙して押し寄せてきている事もあり、地元の責任者はのた打ち回るような苦渋の中に居ます。
先の国会で、自民党の提案により震災がれきの処理を支援するための法案は成立しています。それは国費を投入し地元負担を減らし国が積極的に取り組むという地元に対する予算措置と、一般廃棄物でも産業廃棄物でもない『震災廃棄物』という新しいカテゴリーを作り、県境を越えられるような措置にいたしました。
しかしながら、県境を越えて他県が受け入れるための十分な対応にはまだ至っていません。受け入れ県に対する予算的な対応や、トラブルが発生した時の責任の所在、国が責任を持つという事が明確になっていないからです。
黒岩知事の苦闘を地元の県議より陳情を受け、党の役員会で「国がもっと前面に立つべきだ。そのための環境整備を政府に提言してほしい。」と発言したところ、「それでは党首討論で提案しよう。」という事になりました。
原発がれきを受け入れるわけでなく津波による震災がれきを受け入れる事であり、その都度、放射線量をチェックをして問題がない事を確認して搬送するわけですから、安全の保障と処理促進の環境整備に国はもっと前面に立つべきです。
被災地によっては処理能力の数十年分のがれきを抱えている地域もあり、今こそわが国の絆の力を発揮すべき時なのです。
受け入れ地で通常処理している物の放射線レベル以下の処理が拒まれるという事になれば、その地がいつか災害に襲われた時、他県の協力が得られないという事にもなり兼ねません。
さて、先般、谷垣総裁と野田総理が秘密裏に会談した事が波紋を広げています。
両者とも否定をしています。「表でガチンコの勝負をしている時に裏で話し合いをしているとは何事だ!」と批判をしている人が居ますが、政治家としては的外れな発言だと思います。
与野党は議論をしながらより良い着地点へ国を導くのが仕事ですから、あらゆるパイプを使って決着を導き出すのが使命です。
外交交渉と同じで表の会議で口角泡を飛ばし自国の主張を繰り返しつつも、裏では妥協点を見出すための駆け引きが行われます。
税と社会保障の一体改革も、結論を出さずに放っておいて良い問題ではありません。そうである以上、国民のためにより良い結論を出すためには、水面上のみならず水面下でも色々な協議があって良いはずです。党首が会談を否定している以上、政治的には「了解」に留めるべきなのです。