国会リポート 第230号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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明けましておめでとうございます。昨年は、日本にとって試練の一年となりましたが、最悪の状況下にあっても周りの人を思いやり、被災者が他の被災者に想いを馳せる日本人の精神は世界に感動を与えました。

今年は日本の再生にとって正念場の年となります。『朝の来ない夜はない』という事実を世界に知らしめる一年にしなければならないと思っています。

まずは経済の復興です。最近のテレビ番組で「豊かさ指数」に代わってブータン王国が掲げる「幸福度指数」を目指すべきだ、というような報道が散見されます。誤解してはならないのは、経済成長をしなければ日本という国は年金も医療も介護も制度設計自身が成り立たないという事実です。

年金世代に新規参入する人の数は、亡くなって退出する人の数を引いたとしても毎年 100万人ずつ増えていくというのが現実です。高齢世帯増は当然医療費や介護費用の増大も意味します。

現役世代が年金世代を支えるというやり方では 3人で 1人を支える現状から 2055年には 1人で 1人を支える人口構成になりますから、支えていく税財政構造を設計し直さない限り破綻するのは目に見えています。

老いも若きも国民全体で年金や医療や介護を支えていくという設計変更をしなければ制度の持続性が確保されないのは自明の理です。

ただその際、経済のパイが大きくなって行かなければ消費税収入は増えて行きません。ヨーロッパのように 20%とか 25%にせずとも支えられるようにするためには、経済成長に比例して伸びていく性質の消費税収入を経済成長によって増大させていくという処方箋が必要なのです。

私は、民主党政府が唱えている社会保障と税の一体改革は、どの党が政権を執るにせよ避けて通れない課題だと認識しています。そして改革のタイムリミットはすぐそこに迫っています。

谷垣総裁と私との、役員会におけるやり取りが党内不協和音のように報道されましたが、思うところは一つだと思います。

社会保障と税の一体改革は、むしろ自民党が先に危機意識を持ち、当時野党の民主党に呼びかけたにも関わらず、政局優先で協議が成り立ちませんでした。ならば民主党が自民党に呼びかけるときにはそれ相応の覚悟を決めてから働きかけて欲しいというところです。

当初、野田首相は党内の反対を抑えきる自信がなかったのか、改革の成案どころか素案の閣議決定すらできず、さらには閣議報告という形で与党内の議決も行わずに自民党に乗ってくれと呼びかけようとしました。

まるで先の TPP のまとめのように賛成派・反対派がお互いに記者会見で「我々の要求を受け入れてくれた裁定でした。」と発言するような玉虫色の決め方では相談に応ずる事ができないという意味です。「協力して欲しければ、腹をくくれ」我々は政府与党に為政者としての自覚と責任を問うているわけです。

民主党政府がしっかり閣議決定し、党議拘束をかけ (それは、反対者にはペナルティをかけるという事を意味します)、公務員人件費の削減も議員定数削減もきっちりと仕上げる事を前提に自民党に相談に来い、という事です。

基礎年金国庫負担分をわざわざ本予算から外し、来年度予算を見せ掛けだけ小さくして事業仕分けの成果が出たようなごまかしをするやり方ではもう通用しません。今度こそ腹をくくれ、と迫っているのです。

 

今週の出来事「ほんとは恐妻家?」

 

元日は、多くの議員が皇居へ参賀に伺います。

閣僚、衆参国会議員、事務次官等、それぞれの部屋に分かれて天皇陛下の年頭のお言葉を戴きます。その後、別室に移り全員で乾杯し、陛下からの新年の折り詰めを頂いて帰ります。

折り詰めを自分の分まで夫人に持たせる議員、夫婦それぞれが持つ議員、夫人の分まで自分で持つ議員、色とりどりです。

夫人の分まで持っていた町村信孝議員が「私や甘利さんがいかに家庭内で虐げられているか、この姿を見れば分かるでしょ (笑)」と周りの若手議員に。

「いやいや、私はいつも進んで家内の分まで持ってるんですからね。後援会女性部に人気が高いのも分かるでしょ (笑)」

慌てて夫人から荷物を取り戻す議員も…。

「…選挙は近いな。」