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野田佳彦総理は TPP に対する自身の考えを国民に向けて発表する会見を一日先延ばしにして、昨夜 (11日) に実行いたしました。
TPP をテーマにした予算委員会の集中審議を「いま思案中です」という答弁で逃げるために、予算委員会が終わるのを待って発表した模様です。
その内容は「参加に向けた交渉を開始する。」というものでした。TPP 推進派も反対派も、それぞれ都合の良い解釈ができるような言い回しです。
「入りたい」という意思は明確のようですので、その必要性を熱く語って、影響の出る分野への対処方針をしっかり説明するという事が必要であったと思います。何とか両方に良い顔をしつつ収めたいという思いが伝わってくるだけで、総理の決意が伝わってこなかったのは残念な事でした。
日本は少子高齢社会に突入しており、2025年に高齢化のピークを迎えます。65歳以上の人口比率が 30%を超え、一方、労働人口は減少の一途をたどります。
高齢化社会は社会保障費が増大をします。一方で生産人口が減れば、国家の収入は落ちていきます。つまり日本は、内需だけでは支出が増えていく中で収入が減っていく構造に突入していきます。
ならば必要なのは、国外の成長力をいかに国内に取り込んでいくかという事になります。21世紀はアジアの時代と言われるほど、アジアが世界の成長基盤になります。欧米列国が、いかにアジアにアクセスするか、しのぎを削るアジア争奪戦に入っています。
日本の最大の強みは、最初からアジアの一員であるという事です。次に採るべき作戦は、アジア地域全体の経済ルールを日本にとってホームにするかアウェーにしてしまうかの選択です。
このまま行けば、チャイナルール、つまり力による支配でアジアが仕切られるはずです。シンガポールやマレーシアに加えベトナムまでもが TPP に加わるという事は、アメリカをアジアに引き込みニュートラルなルールを作らせようとしている事であり、力による支配でなくルールが支配するアジアを作らんとしているためです。
野田総理は、TPP の必要性を語るならば、その際に影響を受けるであろう農業の競争力を高める将来ビジョンも同時に示していかなければなりません。
現在、就農者の平均年齢は 65歳です。あと 10年経てば 75歳になり、一農家一農地の生産方式のもとでは一人が離農すると一塊の農地が荒廃地になってしまいます。
月給制できちんと週休の取れるような制度でなければ若い人の参入は見込めません。法人システムのように多くの人達が連帯して集約農地を支えていくというようなシステムがあっても良いはずです。
そこではマーケティングや経営戦略が立てられ、トレーサビリティのもとに安全・安心の日本の農産物が海外に打って出る日が来るはずです。
現状をどんなに守ったにせよ 15年後平均年齢 80歳の農民で日本の農業を担っていくという事は不可能です。若い人達が参入できるようなシステムを作っていかなければ日本の農業に未来はありません。
農協は、農産物の生産から販売にまで関わるプロ集団として農家を育成し、新製品の開発から市場の開拓まで手がける事のできる、農家にとって頼りになる存在になるべきです。死にもの狂いの努力で更に飛躍してもらいたいと願うのは私一人ではないと思います。