総 覧
前号で、自民党議員は地元に帰ると「政府の足ばかり引っ張らないで協力姿勢を示せ!」という声と「もっと対決姿勢を明確にして解散に追い込め!」という声の板ばさみで身動きが取れなくなってしまっていると書きました。右と左から「なってない!」と言われるという事は、裏を返せばどちらにもメリハリが効いていないという事でもあります。
政府に協力すべきところは「これでもかっ!」と言うくらい政府をリードし、反対に政府の間違った姿勢にはチェック機能たる野党の使命として徹底追及していく。両方にメリハリを付ける事によって、両方から評価されるという事を学ぶべきなのでしょう。現在の批判は、両方に及び腰であるが故の事だと認識する必要がありそうです。
最近の新聞の調査で「自民党は東日本大震災の復旧・復興に十分協力していると思うか?」という設問に対し、「NO」という回答が 7割に達しています。
実は、自民党は復旧・復興のための予算や法案には、たとえ部分的に不満があろうともすべて審議協力し、賛成して来ました。それどころか政府の至らないところをカバーすべく十数本の議員立法も提出しています。
瓦礫処理を例に挙げれば、予算の地元負担に固執する財務省の姿勢が処理を遅らせてしまった事は周知の事実で、業を煮やした自民党が全額国の責任で処理するという議員立法を提出し、慌てた政府がそれに相乗りしてようやく処理が進み始めましたが、地元負担にこだわった財務省の当時の大臣こそ野田佳彦現総理であったわけです。
自民党広報本部では、自民党の協力と先導で、はじめて震災復旧が動き出したという事実を分かりやすい数字を挙げて説明する資料を作りました。
テレビや新聞が自民党の功績だけは認めたくない・報道しないという姿勢の中で、インターネットや紙媒体を通じて懸命に作業中です。
さて、野田総理が威信をかけて参加を決定するとアメリカに約束した TPP (アジア太平洋パートナーシップ協定) は、与野党とも反対派が多数をしめています。農協が主導する参加反対請願には、7割前後の議員が署名しています。署名を提出していない私のところへ、親しい農協関係者が心配して様子を見に来てくれています。交渉力のない及び腰の民主党政府に TPP 交渉を委ねる事には不安がありますが、TPP 自体はもっと戦略的に見る目を持ったほうが良いと思っている 1人です。
現状のままでは、高い法人税や CO2 の自虐的規制、さらには最近の円高と原発停止による電力供給不安に嫌気がさして猛烈な勢いで空洞化が始まっていますから、農業どころか日本国自体が終わってしまう危険性が急速に高まっています。
農業を強くする。その原資を生み出すための産業競争力を高める。両方に目配りする事が重要です。
アジアが世界の成長センターになる事は世界の共通認識ですので、アメリカや EU も虎視眈々とアジアの主導権を狙っています。認識すべきは、将来 FTAAP (アジア太平洋経済連携協定) が出来た時に、いかに日本に有利なルールを作るかという事が日本の生命線になるという事です。
中国が ASEAN+3 (日中韓) の枠組みにこだわり、一方日本が上記に加え印・豪・ニュージーランドの枠組み (+6) にこだわるのはまさに主導権争いなのです。シンガポールに加えマレーシアやベトナムまでアメリカをアジアに引き込もうとしているのは、中国に強要されすぎないアジアルールを作るためには何としてもアメリカのプレゼンス(存在感)が必要だからです。
目先の損得ではなく、遠大な構想のもとに戦略を今からたてる必要があります。