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同期生の大島副総裁から自民党広報本部長就任の要請が来ました。再三辞退致しましたが、最後は「同期生の俺と一緒に谷垣総裁を支えてくれ!頼む!」という一言で引き受けることに致しました。かねてから選挙時の広報戦術が民主党に比べてかなり見劣りしていると不満を抱いていましたので、考えてみれば面白いかもしれません。
それにしても、今回の党役員改選は今ひとつ評判がよくありません。自分が役員会メンバーの一人に入りながらそう言うのも変ですが、谷垣流全員野球方式が今ひとつ評価されないようです。
選挙区を歩いていると、「自民党は政府の足を引っ張ってばかりいないでもっと協力する姿勢を見せた方がいい。」という声と、「中途半端な攻め方をしないで徹底的に解散に追い込むという姿勢がなければ政権なんぞ返ってきはしない。」という声が半々です。谷垣総裁は相反する 2つの声に挟まれて、もう一つ鮮明な主張がしづらいのではないでしょうか。
野田内閣の支持率は 2ヶ月連続して下がり、今や 40%台になってしまったようですが、一方で自民党の支持率は民主党のそれを上回ってこそいるものの、政権を担当していた時代の支持率にまで戻りきれません。
党改革委員会が半年にわたる調査と議論の結果、まとめたその原因は、自民党は「国民の不安や痛み」を共有していないのではないか?国内外の変化に対応した「新たな国家ビジョン」や「新たな政策体系」を打ち出せずに、既得権益を重視しているのではないか?という風に国民の目に映っているということでした。
ここで留意すべきことは国民の痛みと不安を共有するということと、国民に迎合した政策を打つということとはまったく別物だと認識することです。リハビリが必要な患者に、同情して回復を遅らせるのではなく、同情しつつそれを乗り越えるために苦しいリハビリへと背中を押していかなければならないのが政治の責任です。国民の痛みと不安を共有したなら、それを解決する手段は決して甘いものではなく、極めて苦い薬を飲まなければならないということを真摯に説得する行為が必要です。
さて、日本が 20年前に経験した金融危機を世界がまったく学んでいなかったということが刻々と明らかになってきました。
1年前に EU (欧州連合) が域内の主要金融機関に対して行なった特別検査で健全銀行と認定されたフランス・ベルギー系の大手銀行デクシアが破綻しました。資産査定が極めて甘かったということになります。90年代の日本の出来事を他山の石とはできていなかったようです。銀行が連鎖倒産を起こすシステミックリスクにはスピードと大胆さが至上命題です。これでもか!というくらいの資本注入用資金を政府が用意し、金融機関に向かって徹底した不良債権処理を迫る。その際の資産査定は厳密に行う。毅然さと大胆さとスピード感が何より重要ということは、90年代の日本の対応が示していたはずです。
ユーロに参加していないイギリスは「それ見たことか!」と胸を撫で下ろしているところですが、同じ島の中にあるアイルランドが金融危機を起こしている現状にはさすがに黙っていられないようです。
まず EU が処方箋を実行すること。そしてこれを日本を含めた G20 が積極的にサポートすること。そしてその中心に IMF が存在感を高めること。やるべきことは決まっています。