総 覧
「夢は見るものではなく叶えるもの」
なでしこジャパン澤穂希主将の言葉は、我々政治家を叱咤しているようです。決勝戦の最後の一秒まで勝利を信じて己とチームを鼓舞し続けた、最高殊勲選手に相応しい言葉です。
その澤選手が一夜明けたインタビューでの「夢には見ていましたが、まさか実現出来るとは…」との発言は、『良くぞここまで来る事ができた』という感慨ひとしおの思いであったのでは?
つまり、トップリーダーの資質とは、客観的に見ればどんなに不可能と思われる目標であってもそれを『共有し』挑戦を始めた以上は、その可能性を信じて常に先頭に立つ不屈の闘志だと教えてくれます。
「苦しい時には私の背中を見て!」と、選手に檄を飛ばす姿勢は、「他の誰よりも己に厳しくありたい!」という決意の表れなのです。(脱帽)
「私も、なでしこジャパンを見習って、最後まで諦めずに頑張りたい。」何を勘違いしたのか、菅首相の発言は、誰も見たくない背中をいつまで晒し続けるのか、辟易とした思いしか呼び起こしません。
円高の加速と電力供給の見通しの不安が、企業の海外流出に加速をかけています。
「国内の雇用は死守する。」と言っていたトヨタ自動車の、「製造業の立地地点として日本はもはや限界を超えようとしている。」という発言は、国内立地の更なる環境の悪化を深刻に表しています。
製造・輸出拠点を日本国内に置く企業にとって、為替レートの損益分岐点は 1ドル 85 ~ 95円ぐらいかと思います。かつて 100円前後であったものを、そこまで引き下げて (引き上げて?) 来たのは相当な企業努力ですが、それを嘲笑うかのような円高です。
トヨタの通期収益は 3千億円の黒字ですが、海外で 7千億円儲け国内で 4千億円損するという構図はもはや日本では国内で販売する分しか作れないという事になり兼ねません。ギリギリまで国内立地にこだわる企業にとって、総理の脱原発宣言による来年 4月の全原発停止の可能性は、国内立地にとどめを刺す結果を招いてしまいそうです。
15%の節電を実行するために、生産を抑え、平日休み、土日に出勤している体制はいつまでも続けるわけにはいきません。経済成長に必要な電気は十分に供給しなければならない以上、有事体制は近々平時体制に戻さねばなりません。
合わせて、日本エネルギー経済研究所の試算によれば、CO2 削減を無視し、仮に世界中のガスタービン発電機を全て買い占めて間に合わせる事ができたところで、燃料代は 3兆5千億余計にかかります。これは電気料金を 20%以上も引き上げる計算になります。電力供給の不安だけでなく、コスト増の不安がメーカーを襲います。
トヨタが国内生産 300万台体制を 200万台体制に縮小すれば、その分だけ雇用は減り、下請企業の倒産は拡大します。
さらに、円高対策に言及すれば、政府が行った為替市場への円売りドル買い単独介入だけでは効果は知れています。円高を逆手にとって、海外の高付加価値資産、資源鉱山や有望な海外企業を買いまくるという戦略をとれば世界は一斉に警戒をし、円安誘導へ協調介入してくるはずです。円安になればそれはそれで国内から輸出ドライブをかければ良い話で、どちらにしても損はしません。
つまり、マーケットが予測しないような衝撃を与えるしたたかな対応を政府がとるべきなのです。円高は、円の価値が上がるという事ですから、それ自体は悪い話ではありません。問題は日本の経済にリンクした円高であるか、市場の思惑による円高であるか、の違いなのです。
現在は後者である事が明らかである以上、市場を逆手にとったしたたかな戦略が必要です。