国会リポート 第213号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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「ニュースでご存知だとは思いますが、中部電力の浜岡原発を止める事にしました。」

大学の同級生である海江田経済産業大臣から私の携帯に連絡が入りました。

「政府が安全性に自信を持てないというなら政府の責任で止めれば良いと思うけど、他の原発に波及する懸念はないの?」

「それは絶対にさせません。浜岡は 30年以内にマグニチュード 8 以上の地震が来る確率が 86%と一番高い数字が報じられているところですから、浜岡の特殊性によるものです。安全が確保されるまでの間、止めるだけですから。」

福島第1原発の事故発生以来、やるべき事をアドバイスして来ましたので大臣から連絡が来たわけですが、この間、海江田大臣と菅総理との思いの落差をしばしば感じてきました。日本中の原発は 13ヶ月ごとに定期検査の為、停止致します。検査完了合格後も地元の了解が得られず、再稼働できない原発が 4基あります。浜岡原発の『要請停止』が他地区の原発にドミノ倒しのように連鎖していけば日本経済は壊滅的打撃を受けます。

40年前に完成した福島第一原発は、その後の補強工事により、"想定外" の耐震強度に対応できましたが、"想定外" の耐津波強度には対応できませんでした。原子力安全保安院は、直ちに全国の原発に対し津波対策のためのガイドラインを示し、すべての原発の対処が間もなく終了いたします。

永田町や霞ヶ関で心配されている事は、今年 1月に菅内閣の下で発表された 30年以内の地震発生確率が、大事故を引き起こした福島第一原発で 0.0%、浜岡原発で 87%となっており、数字だけ見れば浜岡を特別とした説明がつかなくなる恐れがあることです。

私が党内で担当するエネルギー政策合同会議は、朝日新聞による捏造記事のような「原子力を守る会」ではありませんが、いずれ政府のエネルギー基本計画を見直すための提言もしなければならないと思っています。

昨年 6月に民主党政権が発表したエネルギー基本計画では、2030年までに原発を 14基新設するとあります。現実問題としてこれを実行する事は不可能と思われますので、まず現存の原発の安全性、とりわけ津波に対する安全性をどう確立し、オーソライズさせ、検査合格後速やかに立ち上がれるよう地元の了解を得るという事。次に、基本計画が達成できなくなる分をどう補完していくか、という事について太陽光や風力、地熱等の推進を含めて、広範な予断を排した議論が必要だと思います。

資源がなく、島国として孤立し、他の国と電線網が繋がっているわけでない日本は、エネルギーの安定供給に極めて脆弱な体質である事はオイルショックで嫌というほど知らされました。

原発は、一度燃料を装填すれば補給する事なく年単位で稼働するいわば炉内に備蓄基地を持っているのと同じ機能があるがゆえに、資源小国日本のエースとして期待されました。

安全性の信頼が大きく揺らいだ今、さらなる英知を結集しなければなりません。

3年前、私の経済産業大臣としての最後の仕事はメガソーラー発電 (大規模太陽光発電) を各電力会社に要請した事ですが、先日そのメガソーラー発電建設に関わった会社の方々の訪問を受けました。

「いやー、あれだけ広大な敷地で、たった 2万キロワットなんですから。」

「原発の 50分の1 ですね。確かに原発一基分は太陽光だと山手線の内側全部が必要と言われますからね。風力でやると琵琶湖の 3分の1 ですか。」

今後、日本中の英知を結集して原子力安全に加え、供給安定性と CO2 削減、さらに経済合理性の調和が図れるエネルギー政策を進めていかなければなりません。

 

今週の出来事「日中友好?

 

連休中、超党派の議員団 7名で中国を訪問し、習近平次期国家主席を始め要人と会談してきました。

中国に行くたびに感ずる事は、一番偉い人の話だけ聞けば他の人は右へ倣えだという事です。

経済界はアメリカ留学組が主流となりつつありますが、共産党組織は純血主義が貫かれています。

それにしても、街の中が清潔になった事に驚かされます。常時、ディズニーランドのようにちりとりとほうきを持ったおじさん (?) が行き来をし清潔に保たれています。

感心していると「お客さん (外国人) が来るところだけですよ。」

「う~ん…、我が家と同じか (笑)」