総 覧
最近、地元を回ってとみに感ずる違和感は、政府の景気回復判断と地元の中小企業間に漂う景気悪化感覚との乖離です。
今までの政治生活で感じたことの無いこの違和感、すなわち、政府は「景気回復基調にある」と発表しながら、地元はさらに景気が悪化傾向にあるという矛盾です。
大企業の業績が V 字回復を遂げているのは事実ですが、それは海外市場なかんずくアジア市場における好調が要因です。国内では自動車販売と家電販売がプラス要因ですが、政府も認めている通りこれは前政権の自動車買い替え減税と補助金や省エネ家電購入の際のエコポイントが貢献しています。
秋以降、これら前政権の政策が打ち止めになった時に、新政権の真価が問われます。
来年度予算編成は一から民主党政権がかかわる初めての予算編成だけに、民主党の政権担当能力が正面から問われます。注目を集めた基本方針は、自然増の国債費と社会保障費を除いた一般歳出を一律 10%カットするという味も素っ気も無い財務省主導そのものでした。あまりの官僚主導に気恥ずかしい思いをしたのか『政策コンテスト』なる新語を編み出し、政治主導をアピールしようとしています。1兆円の成長戦略枠を作り、それに政策コンテストでプライオリティを付けるという事です。
そもそも、マニフェストに掲げた政策に優先順位をつけて行い、予算の限度額に達したところで残りの政策はおしまいというやり方をするというのがかつての政権公約でありましたが、財務省主導によるやり方に変更し、新語で有権者の目先をごまかすというやり方はもう止めた方が良いと思います。
我々なら以下の事を提案します。
- 輸出が打撃を受けて国内経済が落ち込んだので内需主導に変更する、というのは認識の誤りと自覚する。
前号でもお知らせした通り、GDP に占めるわが国の輸出依存度はアメリカと並んで先進国では一番低いのです。人口減少で内需が落ち込んで行く際には外需依存をさらに高めるべきなのです。ただし、為替リスクを避けるために経済連携協定により経済国境を取っ払い、国内生産と海外生産とをコラボレートさせる事、すなわち日本国内を開発拠点・マザー工場とし、海外を量産工場とする。国内外の企業間連携の強化です。 - 科学技術予算を増額するとともにその使い勝手を改善し、基礎研究は国、実用化研究は企業として、国と企業の連携を強化する。
科学技術予算の事業仕分けの際、蓮舫さんからは「この予算はすぐに成果が挙がるんですか?」と質問され、「挙がります」と応えれば「じゃあ民間にやらせれば良いでしょう」と言われ、「すぐには難しいと思います」と応えれば「そんな定かでない物に予算は付けられません」と言われたそうです。あげ足取りやディベートテクニックではない、予算の本質を問う仕分けを是非ともしてもらいたいものです。 - 社会保障費の自然増に配慮しつつも、効率化の例外とせず、IT の徹底的導入で効率化を図っていく。
- 一律カット方式で財政再建をするなら、1割カットというチンケな方法ではなく、一律カット率をさらに高めて成長枠だけでなく全体予算の再構築のための再配分原資とする。
- すべての大前提としてマニフェストは一旦すべて取り下げ、垂れ流しを止める。
菅政権のスローガン『強い経済、強い財政、強い社会保障』は、強い経済さえ作れば残りの大半は解決するという事を肝に銘じ、デフレからの脱却にスタートする強い経済を優先順位 1位として取り組んでもらいたいと思います。