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6年間で 11億円に及ぶ政治資金の不正処理・脱税疑惑により本来は下がるべきはずの鳩山内閣支持率を押し上げているのは、事業仕分けへの高い評価だと言われています。自分で作った予算を自分で「無駄がある!」と糾弾するのは考えてみればおかしな話ですが、テレビを見ている方は、自民党が作った予算を民主党が査定していると、見事に勘違いしてしまいます。
そもそも、事業仕分けは予算編成をする時に今までも必ず行われていたものです。
予算を要求する各省の会計課長と予算を査定する財務省主計局の各省担当主計官とが、あらん限りの知識と理屈を駆使してその必要性の有無の攻防を繰り返すわけです。ただ、今回は査定する側が財務省主計局ではなく政治家が行ったという点に違いがあります。
主計局が予算査定をする際、要求する側の役所の後ろにその予算を応援する議員が就いていて主計局の査定に手心が加わるのではないか、だから主計局に代わり議員が遠慮なくバサバサと切っていくのだ、というのが新しい事業仕分けの理屈です。
政治家が要求する側のリーダーシップだけでなく、査定する側のリーダーシップを発揮する事は良い事であると思いますし、大いにやってもらいたいと思います。ただし、査定する以上は、査定する側の人間はその政策を要求する側以上に勉強している事が絶対条件になります。知識もなく政治的圧力だけで有無を言わさないというやり方は、絶対避けなければなりません。
かつて自民党税制調査会では、細かな各種税制特例制度 (租税特別措置) を改廃する時には税のエキスパートたる財務省主税局の各課長と議員本人が論戦を交わし、税の理屈で相手を論破できない限り政策要求が認められないという訓練の場を経て、知識も論陣も鍛えられていったものです。
「公開処刑」とか「人民裁判」とか揶揄されている事業仕分け人の政策知識があまりにもお粗末な事を嘆く識者は数多 (あまた) おります。
「スーパーコンピューター」や「スプリングエイト」に象徴される科学技術研究費が大幅にカットされましたが、蓮舫議員の「スーパーコンピューターは何故 2番じゃいけないんですか?」という発言に象徴されるように、仕分け人の資質に疑問を抱かざるを得ません。
事業仕分けの評判が余りにも良いものだから、参議院選挙の前にもう一度カメラを入れてやろう、という声が民主党の中で上がっているそうです。再来年度予算は、一から民主党が作るわけですから、要求の段階から政治主導で無駄のない物を要求していけば良いわけでありますし、一から自分が作った予算を公開の場で非難していく事は、まさにパフォーマンスのためのパフォーマンスでしかありません。
鳩山総理の各省大臣に対する号令は「予算要求をする時から、要求大臣ではなく査定大臣の心構えでせよ」という事だったはずです。
政権を取るという事は、評判の悪い政策も含めてすべてに責任を負うという認識を持てば、朝から晩までカメラ受けだけを考えるような政治ではなくなるはずです。
このところ、アメリカ政権関係者と接触をする日本の識者たちから「日米関係、戦後最大の危機」という言葉が頻繁に発せられます。
「日本がそれほどアメリカ依存からの脱却をしたいと言うなら、在日米軍のすべてを引き上げたって良いんだ!」と真顔で語るアメリカの識者も出てきました。
オバマ大統領はアメリカの対アフガン新戦略について、中国やインドなどの他のアジア諸国に直接電話で理解を求めましたが、日本にだけ連絡して来ないというあからさまな行動に出たと報じられていますし、アメリカの経済界関係者はもはや日本には何の興味もないと言い出す者まで現れました。
野党第一党たる自民党は、民主党政権に対する外部監査役です。経営上の問題点を常に質して行く事を第一の使命と致します。