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2009年 6月 12日金曜日、麻生総理は盟友鳩山前総務大臣を更迭いたしました。直後の会見で、鳩山氏は無念さを自身を西郷隆盛に見立てて語っていましたが、誰が一番辛かったかと言えば長年自分を支えてくれた側近を切らねばならなかった麻生総理ご自身だと思います。まさに「泣いて馬謖を斬る」辛い決断だったと思います。
日本郵政の西川社長に関して言えば、かんぽの宿の不透明な対応等問題点は確かにありますが、その多くは郵政公社の時代からの体質に起因するものであり、民間人から三顧の礼をもって迎えられた社長の責任にすべてを帰してしまう事には無理がある、という議論は以前からありました。
一方で、民営化後の日本郵政は、税金の納付という形で郵政公社の時代の国庫納付金の 2倍の四千億円以上を国庫に納めました。この経営改善の成果は西川氏によるところであります。また、鳩山前大臣による業務改善命令に関しては真摯に受け止めて最大限の改善努力を行うという決意表明もなされていました。何より民間企業の外部取締役会とも言える民間委員による指名委員会が、全会一致で西川社長の続投を決定した事は考慮しなければならない点であったはずです。
そうした上で、さらなる民営化に向かう民間企業に対して政府が介入すべき範囲は、資本主義市場経済における民間企業と政府との関係にまで影響が及ぶという点を、麻生総理は慎重に判断されたのだと思います。
西川社長からたとえどんな改善計画が提出されようと、たとえどんな決意が示されようと、最初から西川社長を解任するという、先に結論ありきの鳩山前大臣の姿勢は麻生総理の選択の余地をなくし、こういう事態に陥ってしまう前提を作ってしまったことが残念でなりません。
目的は国民にとってより利便性の高い民営化を進めるという事ですから、結論が出た以上はそのために内閣の一員としてしっかりと総理を支えて行きたいと思います。
さて、いよいよ総選挙に向けて党のマニフェスト作りがスタートいたします。党三役代理に菅選対副委員長が加わりマニフェスト作成チームが編制され、麻生総理の意を受け、細田幹事長の指名で座長に菅氏が決定いたしました。菅座長には私からもマニフェストに対して思うところを提言しましたが、政権選択がかかる今度の選挙に対して背水の陣で臨む自民党はかつてないほどのエネルギーをこの作成に投入いたします。
野党として注文をつけるだけの事と、与党として国民の生活に責任を持つという事は 180度異なります。政権を担うという事は国民の生命と財産を預かる事を意味します。さらに、党内の意見が一致しない事を理由に、安全保障政策や外交政策・危機管理政策を先送りするという態度など絶対に許されないという事を意味します。
「米第七艦隊だけ居れば在日米軍は必要ない」というような無知な発言は野党だからこそ許されるものです。民主党幹部は地方分権論の中で、外交防衛のみ中央政府が担い、それ以外は地方に任せるのが目指すべき自分たちの方向だと言いながら、担当すべき外交・安全保障政策の中身が党内事情から確定できないというのでは、「中央政府を所管する自分たちは結局何もできません」と言っているのと同じではないでしょうか。
政権を担うということは苦渋を担って行くという事でもある、という覚悟がどれくらい出来ているのでしょうか。政権を取ってから考える猶予は、この日本にはないのです。