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NPO法人 (特定非営利活動法人)『はむるの会』の発足式に来賓として出席いたしました。
『はむるの会』とは、成人 T細胞白血病ウィルスの感染によって引き起こされる脊髄症や白血病リンパ腫の患者を支援し、この病を国の難病指定とし医療体制の整備と感染防止を呼びかけていく団体です。
ウィルス感染源は母乳感染や性感染や輸血感染です。しかし、献血にこそ抗体検査はありますが、妊産婦検診時における無料のウィルス抗体検査は一部の県でしか導入されておらず、感染防止体制は完備しておりません。舛添厚労大臣にも働きかけているところでありますが、感染防止体制の完備と治療方法の開発が急務です。2年前、経済産業大臣をやっていた時に医療分野の研究開発が欧米に遅れをとっている事に衝撃を受け、抜本的な体制の構築を当時の柳沢厚労大臣に呼びかけました。
医薬品や医療機器は薬事法の管理下におかれます。基礎研究から始まり臨床研究、次に治験 (臨床試験) を経て薬事承認となり市販されます。それぞれの段階に移行していくのに膨大な時間と労力がかかり、スムースな移行体制が整っておりません。
アメリカでは、臨床の際に使われる未承認医薬品・医療機器には市販される際の許認可とは別なルールがあり、臨床用に限った迅速な許認可制度が別立てで出来ています。日本の場合は市販される際のルールが臨床の際にも適用されますので、完璧なものでない限りそれがなければ死を迎えるしかないという患者にすら使用許可が下りません。副作用が出た場合に責任を問われるという事がトラウマになり、座して死を待ち兼ねない事態を発生させています。
自分の健康な細胞を培養して病気の細胞を除去した後に貼り付けるという自家移植細胞技術も、技術力はありながらそれを発展させていく事が法律や制度で阻まれています。患者の体内に埋める医療機器や、革新的な医薬品が外国勢に席巻されているのも、薬事法や医療法の設計年次が古いという事に起因しています。
医は仁術という言葉は、医療分野に産業が入ってくる事を拒んでいるようにも思われます。しかし、断言できることは、医療分野に産業が入ってこなければイノベーションは起きないという事です。
先般、自家細胞移植に関する学会の教授陣数名と一時間話し合いを持ちましたが、こういう時こそ政治がリーダーシップを発揮すべきであると痛感いたしました。
私が、現在の規制改革担当大臣になって直ちに取り組んだのがライフサイエンス分野の規制改革です。A病院で培養した細胞を B病院で使用する事すら制約のある現状を、医療技術の進化に対応できる制度とするべくいくつもの提案をしております。
細胞移植に関して医者とライフサイエンスエンジニアとのコラボレーション、難病重篤患者に対する治験・治療における新たなルール、薬事承認スタッフの量と質の大拡充、試験研究費の臨床研究への流用の柔軟性等々、すぐに効果のある取り組みは山積しています。
日本再生医療学会のホームページを見ていましたら、最初に「甘利大臣の働きかけにより道が開けてきた…」というような紹介文が掲載されておりました。
政治家は志さえあれば世の中を変える事ができる意を強くしてこれからも精進して参ります。