総 覧
今年の始めとして新たな行政改革の工程表を夏までに策定するよう、総理から指示がありました。基本的な考え方をまとめたものを今週提示し、総理の指示を仰ぎたいと思います。
麻生総理と接していて伝わってくる想いは、歴史が評価する宰相でありたい、というものであります。
御祖父吉田茂首相は、現役時代はそれほど高い評価や支持が得られませんでした。しかし、後世偉大な宰相としてその評価が定着しています。ポピュリズムに陥らず、誤解を恐れず、十年・二十年後に評価される正しい方向に日本を導きたいという想いが、麻生総理から強く伝わってきます。
日本が世界に先駆けて金融経済危機から立ち上がり、景気が回復し国民経済の体力が回復した後、社会保障の安定や財政再建に取り組んで行くための税制の抜本改革を行う、という麻生総理の強い決意は、まさに歴史の評価に耐えうる政治家たり得たいという事だと思います。
『増税の話をする前に行革を。』与野党問わず言われる常套句であり、特に民主党は謳い文句にしています。そんな事は言わずとも誰もが当然と思っている事ですが、同時に行革は『ここまでやれば良い』という終わりがあるものでなく、未来永劫、恒常的に行うべきものであるという事を忘れ、抜本的税制改革を行わない事の言い訳に使われているような気がしてなりません。
「行革が道半ばだから」という理屈で他の改革をしないというアリバイ作りに使われぬよう、行革は行革で行い、税制改革は税制改革として時期と必要性を真摯に検討する、冒頭の指示はそういう環境を作るために年初に総理から出されたものであります。
従来の行革は、コストを削り人員を削り無駄を削る言わば「ケチケチ行革」でしたが、捻出できる成果も次第に小規模になってきます。私はまったく新しい視点で切り口を変えた新行革を提案したいと思っています。
ところで民主党の政権公約、子育て手当てを一人当たり 2万6千円にする、消費税で基礎年金を手当てし保険料は無料にする、農家に総額1兆円補助金を追加する等、バラ撒き政策に要する費用は毎年 20兆円を超えます。その費用は行革で生み出し、消費税を 1%も引き上げないという論理の中で、原資は一般会計と特別会計を足した 212兆円の 1割をカットして捻出するとありますが、多少なりとも予算の知識がある者にはとてもまともな主張とは思えません。
212兆円のうち年金や医療費の支払いで 67兆円、国債の利払いや借り換えで 88兆円、地方交付税で 16兆円以上が消える、つまり右から左にお金を出すだけで行革の余地がほとんどない部分で 212兆円のうちの 171兆円を占めており、残り 41兆円で教育から科学技術開発から防衛から外交から中小企業政策からすべてを賄わなければなりません。その費用をいきなり半分にしてしまうなどという主張は正に絵空事と言えます。もちろん、億単位の行革は出来ると思いますが、兆単位ましてや毎年 20兆円を削るという手品があるなら、ぜひそのタネを教えて欲しいものです。
各選挙区の民主党の候補予定者が「子育て手当て等は天下りの行われている独立行政法人への交付金 12兆円をなくして当てます。」と書いたビラをまいています。一つ間違えば詐欺行為です。そもそも独立行政法人は、かつて省庁が行っていた仕事のうち実施事務だけ切り離して効率的に行わせているものであり、12兆円とはその事業費なのです。もちろん、人件費も入ってはいますが、12兆円の一部でありますし、天下りの人のそれはそのうちの更に一部でしかありません。それを払わないとしても天下りでない人にその役職を差し替えればその人に払わなければなりません。天下りは正しますが幻想を与えてはいけません。