総 覧
ついに日本でも新型インフルエンザの感染者が発生しました。
外国から入ってくる港や空港で侵入を阻止するための水際作戦も、人・物が圧倒的スピードで世界を移動する現代では、残念ながら時間稼ぎにしかなりません。しかしこの時間稼ぎこそ大事なことで、国内二次感染防止体制を整えるための猶予時間稼ぎなのです。罹患の疑いが発生した場合に隔離して診断及び治療を受けられる体制を全国津々浦々いかに整備していくかが肝要です。病院で一般患者に混じって診断を受ければ病院自体が二次感染源になる恐れがあります。
幸いにも、現在この新型インフルエンザは弱毒性ウイルスといわれ、タミフルやリレンザのような治療薬が劇的に効くという事ですが、ウイルスは細菌と異なり途中で鳥インフルエンザのように強毒性に変異する可能性がありますので、油断はできません。
連休中に英・仏を訪問した際、出発時から細心の注意をはらいスタッフ全員にマスクを着用させていきました。ところがパリのシャルルドゴール国際空港に着いた際、マスクをしている人は入管職員も含めて他に一人もおらず、我々マスク集団が異様な視線を浴びた事は意外でした。それはフランス政府の危機意識の低さというより予防的にマスクをする習慣がヨーロッパにはほとんどないという事でありました。
パリやロンドンの街中はもとより、ヒースロー空港 (イギリス最大の空港) ですらマスクをしているのは日本人だけで、習慣の違いをまざまざと感じましたが、イギリスでは臨時休校になる小学校が発生し、ブラウン首相は記者会見で「全戸に対処方法を促す文書を配布する」と表明していましたので、各国危機感は共有しているようです。
⇒ (参考) 新型インフルエンザ対策関連情報 (厚生労働省)
もう一つロンドンで驚いた事は、街の数十個所にジュースポイントと呼ばれる電気自動車の充電ポストが設置されている事でした。テスト段階とはいえ、実際に何個所かで充電している電気自動車の姿を見ると、環境への取り組みが現状の技術を先取りして行われている事を実感いたしました。
さて、視察の本来の目的ですが、国家公務員制度改革と規制改革について、数人の閣僚及び担当責任者と会談を重ねました。会談を通して感じた事は、外国の公務員制度について、改革を唱える日本の与野党国会議員は、あまり正確に理解していないという事でした。
民主党の菅直人代表代行は「我々はイギリスのような行政・公務員制度をイメージしている。」と発言しました。イギリスの公務員局長と話をしてみると、職員の昇任はポストが空き次第、内外公募によるものでありましたが、大臣には任命権はなく事務の副長官や事務次官つまり官僚が選考・選定し、大臣は追認するだけという官僚主導人事そのものでした。不祥事でも起こさない限り降任させる事は不可能で、こちらが描いているイメージとはまったく違うものでした。
外国かぶれ型の日本の改革は、断片的に各国制度のつまみ食いに陥りやすく、全体の整合性が取れないものになりがちです。世界中の制度の世間受けするところを全部寄せ集めると、何の機能も果たさない、ロクでもないものが出来上がるという事を肝に銘ずべきです。
経済対策や規制緩和に関して言えば、インセンティブとペナルティをどう組み合わせていくか、金融の制御ルールで言えば自由度を損なわないようにしつつ暴走をどう食い止めるか、想いは共通する事を実感しました。
仏サルコジ大統領側近のボルロー大臣も、英ブラウン首相側近のマンデルソン大臣も、私とは旧知の間柄です。経済産業大臣をやっていた経験がここでも生かされました。