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今話題のジョン・ウー監督製作の『レッドクリフパート 2』を観てきました。昨年 10月の東京国際映画祭の際に、記念上映作としてパート 1 を観て以来、パート 2 が公開されるのを心待ちにしておりました。
レッドクリフ赤壁の戦いは、今から 1800年前、中国三国志の時代の歴史的激戦を描いた映画です。曹操軍 80万対孫権・劉備連合軍 5万との雌雄を決する戦いで、圧倒的不利を跳ね返した連合軍の知略奮闘ぶりを描いた作品です。孫権軍の総司令官「周瑜」の洗練された勇猛さ、これを戦略的に助ける劉備の知恵袋「孔明」、命知らずのスパイ活動を続ける孫権の妹「尚香」、幼馴染で曹操が想いを寄せる絶世の美女周瑜の妻「小喬」。綾なす人間ドラマが繰り出す壮大な戦国絵巻…。
観客は恐らく、トニーレオン演ずる連合軍総司令官周瑜の洗練されたリーダー像や、金城武演ずる諸葛孔明の思慮深さと勇気に魅了されると思います。しかし私は、80万を率いるヒール (悪役)、チャン・フォンイー演ずる曹操孟徳に強烈に惹かれました。
確固たる信念で国を統一するという高い目標を掲げ、いかなる困難にも微動だにしない、想像すらしない大逆転劇に陥った中でも怯む事無く取り囲んだ敵を一喝する曹操の毅然たる態度に魅了された一人です。
最初から不利な戦況の者が、不利な戦いに臨む場合、想定内で動揺はないはずですが、圧倒的有利な者が想像だにしない大逆転に追い込まれた時にどういう態度で居られるか、という事はリーダーにとって学ばねばならない点だと思います。予想だにしない事態、想定すらできない事態が発生した時、怯まず微動だにしない対応が取れるか否かはリーダーたる最高の資質と思い知らされました。
曹操にせよ周瑜にせよ、一人のリーダーの下に何万という部下を率いるための最強のタガは夢を共有するという事でありました。それぞれトップが思い描く夢を部下が共有し、心を一つにする。疫病で倒れる味方兵士群に向かって「戦いに勝って世の中を平定して家族の待つ故郷に帰る、そのための戦いを今しているんだ!」曹操が鼓舞すると、病んでいた兵士達が気力を振り絞って立ち上がり、鬼気迫る様相で雄叫びを上げる。
指導者たる者、向かって行く先に何があるのか、何のための苦労か、をしっかりと提示する。その必要性は時代を超えたリーダーとしての資質だと痛感しました。
数ヶ月前、トヨタの張会長と対談した時に、トヨタウェイとは、不具合が発生した時それが人為的所作でない限り責任追及ではなく原因追求をすべき、というお話でした。
例えば、ある個所から油漏れがする。その原因は何か。ネジが緩んでいるから。ネジが緩む原因は何か。ワッシャーを噛ませてないから…等。
責任追及から始まるとネジが緩まないように注意するだけで終わってしまう。根本解決をするために責任を追及せず原因を追究する。事態を迅速に改善するためにはこの手法が極めて大事であると、張会長は力説します。
赤壁の戦いにおける曹操の敗因は、責任の追及を優先するあまり原因の追究が疎かになったところであると教えてくれます。
トヨタウェイとレッドクリフ、1800年を超えた歴史が今を教えてくれます。