総 覧
テレビの報道番組は真実を伝えていると堅く信じている人は多いとは思いますが、あにはからんや最初から番組編成者のシナリオがあり、それにそって映像をつなぎ合わせるという手法がしばしば行われます。
前後のニュアンスからするとまったく違う意味合いになるのに、部分的発言だけ切り出してまったく違ったニュアンスとして受け止められるようにする手法はテレビでは昔からありますが、最近はますますひどくなっているように思われます。その部分をしゃべっているのは事実ですが、前後の発言からすると別の意味合いになる、つまり真実はまったく違ったものになるのにあえてそれを伝えません。
新聞やテレビは部分的事実は報道するけれども、全体が示す真実は報道してくれない。私が政治家になって以来のマスコミに対する不信感です。
公務員制度改革担当大臣に就任して最初の仕事は、一ヶ月以内に新しい公務員制度の中核たる内閣人事局を内閣官房に設置するための法律を整備することでした。ふた月前、すなわち渡辺行革大臣の時に着手していなければならなかったはずの明治以来の大改革が、政局の混乱を理由にたなざらしにされ、残り一ヶ月で私のところへツケが回ってきたわけですが、その使命感故に私は日曜も返上で審議を深めることをワーキンググループに要請し、期限内にその報告を受けることといたしました。
するとマスコミは、こんな短期間の内に結論を出すのは「拙速だ」と言いながら、ならばさらに議論を深めようとすると、期限内に結論を出さないのは「先送りだ」という始末です。所詮、日本のマスコミはこの程度だと思いつつも、その報道を丸ごと信じ込むであろう有権者のことを考えるとまた憂鬱になります。
こうなれば、「拙速だ」とも「先送りだ」とも絶対に言わせない。私に生来の反骨精神がメラメラと燃え上がっています。渡辺元行革大臣が敷いた公務員制度改革の全行程は 5年間で完成というプランでしたが、改革を加速させ、なんとしてもこれを 4年に短縮してみせようと思います。マスコミのミスリードは雇用能力開発機構の改革についても同じようで、いかに私の改革案が後退したものかを強調するシナリオが用意されています。
改革を行う時に大切な事は、(1) 設立時の原点に立ち返る。(2) 時代の要請 (変化) に対応する。を基本とすべきです。つまり、本質論を忘れてはなりません。
各省間の調整を仕事とする特命担当大臣は、とかく一年生大臣が就任しがちですが、かつて中曽根元総理や橋本元総理がこの職に就き辣腕をふるった様に、本来はベテラン実力者大臣が就任すべきポストで各省各大臣を説得して改革を推進させる実力が要求されます。
さもないと、事務方の言う通りにするか、マスコミと結託したスタンドプレーをすることになりかねません。日本社会は、最初に特定の色をつけられてしまうと、どう説明しようと聞き入れてもらえず、最後まで聞く耳を持たなくなるマスコミファッショ的体質が懸念されています。『マスコミ報道 (特にワイドショー的ニュース報道) を疑う』という客観的な視点を養う教育が必要ではないでしょうか。
30分毎に交互に主張を入れ替えて相手を説得する「ディベート」の授業をもうけているアメリカは、新聞・テレビの主張を自分の主張と勘違いしない自己の確立に努めています。