国会リポート 第136号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

終戦直後、日本国民の生活水準は当時のベトナム以下であったと報告されています。資源もない、お金もない、ないないづくしの日本が戦後 20数年で、世界第2位の経済大国になった秘密は、逆境を順境に変えた発想と、不屈の精神があったからだと思います。

資源がないということは、逆に考えれば世界中の資源の中から最適なものを選択できる権利を有しているという事になるし、政府にお金がないということを逆手にとれば、国民から郵便貯金を通じて広く薄くお金を集め、産業インフラの整備に集中的に資金を投ずるという発想を生み出す事ができました。併せて、このままで終わってたまるかという日本人の不屈の闘志と、それぞれの知恵と力を共有するという良き国民性・チームワークによって、成し得た発展だと思います。これを世界では「東洋の奇跡」とか「20世紀の奇跡」と称しました。

バブル崩壊後、長い停滞の中で日本は閉塞状況にあります。加えて、近時のアメリカ発金融不安や資源原材料高のあおりを受け、状況は深刻さを増して来ました。

今こそ、強い政治的リーダーシップと共に国民の総意を結集し、再び「東洋の奇跡」すなわち「21世紀の奇跡」を起こさなければなりません。

経済産業大臣在任中、私はそのための処方箋を書き、政府に提案してきました。まず、日本にパラダイムシフトすなわち日本を構成する基本的要件の転換が起きていることを前提に基本設計をし直すということです。その第一は日本が初めて経験する人口減少です。人口減少は生産力や国内消費力を縮小させていきます。国内の生産効率を上げ、少ない労働力でより多くの付加価値を生み出し、イノベーションで新製品・新サービスを開発し国内消費の深化拡大に繋げる事が必要です。併せて近隣諸国への経済圏の拡大で、消費力の増大をしなければなりません。労働力の減少の中で国内の生産力を増強するには限界がありますから、海外に生産拠点・サービス拠点を展開して行かなければなりません。

日本経済は外需依存・輸出依存型といわれ、内需型への転換を指摘されています。イノベーションによって国内需要を掘り起こすことは当然ですが、厳密にいえば、外需依存と輸出依存は異なります。輸出は生産基地が国内にあり、そこで生産したものを外国へ輸出するので為替変動や輸出先の景気で乱高下しますし、国内の資本と労働力が潤沢になければそもそもの輸出増強はできません。

外国に日系企業の生産拠点があれば、その国の労働力と資本を使う事ができますし、為替変動の影響を受けません。要は海外で得た利益を日本国内に還流する仕組みを作れば良いのです。日本を付加価値創造の拠点、すなわちイノベーションセンターとし、海外を生産拠点としてそこで得た利益を日本に還流させ、それをイノベーションや賃金・下請代金引き上げの原資とする。現在の GDP (国内総生産) という発想から今後は GNI (国民総所得) という発想に変換して行くべき時なのです。

 

今週の出来事「さくら咲く…総裁選

 

世の中には色々なオーラを持っている人が居ますが、麻生太郎さんのオーラは『周りを元気にしてしまうオーラ』だと思います。

話しているうちに、小さな可能性でも大きく広がっていくような気にさせられます。

前回の総裁選では菅代議士と二人で「当分、干されるだろうけれども腹をくくってやろうぜ!」と、麻生さんの応援に乗り込んでいきましたが、当の麻生さんは麻生包囲網ができた時でも我々の前では微塵もめげた様子を見せず、周りを励ましていましたから、『凄い人だなぁ』と思いました。

この人がリーダーになれば全員が困難に立ち向かう勇気をもらえるんじゃないか…そんな想いになります。

私の最近の愛唱歌、森山直太郎さんの「さくら」

『♪くじけそうになりかけても、頑張れる気がしたよ♪』