国会リポート 第116号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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8 月 27 日は私の 58 回目 (48 回目だったかな?) の誕生日でした。地元を回りながら 「誕生日に閣僚をクビになるんですから、それこそ生涯忘れられない日になりますね。」 と冗談を言っていましたが、今までで一番大きなプレゼントをもらった誕生日に変わりました。

よく記者の方から 「事前に連絡はあったんですか?」 と聞かれますが、まったくそういう事はありません。ただ、間接的に 『信頼されている』 というニュアンスだけは伝わって来ました。私自身、いかなるポジションであろうとも安倍総理を支えていくという決意にゆらぎはありませんでしたから、人事が近づいても前回のようにピリピリする事はありませんでした。

2 ~ 3 日前からマスコミ各社より 「政調会長ではないんですか?」 という問い合わせが頻繁にありましたので 『まさか』 と思いつつも 『少しぐらいあるのかな?』 という気になってしまいましたが、予想は見事にハズレました。でも、内心ほんの少しホッとしたような気分になった事も事実です。

辞表取りまとめの閣議の後、大臣室へ戻るとすぐ総理から留任の連絡を頂きました。そういえば、数日前の総理の記者懇談で 『経済成長が大事』 と随分強調されていましたので、自分の後任の担当者は誰が選ばれるんだろう、と不思議な気持ちでいた事もまた事実です。

私が安倍総理を支えたいと思う理由は、総理の人柄が伝わっていないという事もありますが、『このままでは終われない!』 という強い気持ちからです。第一次安倍内閣が残した政策的実績は、発足後 11 ヶ月までで比べれば、歴代内閣中 1・2 を争うものだと思います。国民に憲法改正の自由が与えられながら、その手続法がない欠陥の是正・教育の改革にその基本から取り組む法改正・格差是正に向けての各種法案成立・財政再建と経済成長の両立に向けての大きな歩み、数え上げればキリがないほどの政策実績が閣僚のスキャンダルですべて帳消しにされてしまいました。

もちろん、しっかり国民に伝える事ができなかった点は大いなる反省でありますが、政策の方向性は決して間違えてなかったと確信しています。それ故、『このままでは終われない!』 という気持ちです。

記者の皆さんに言わせると 「安倍さんは幹事長の時が一番安倍さんらしくて良かった。周りがいじり過ぎて、今は本来の良さが伝わって来ない。」 という事だそうです。幹事長と総理ではその責任の大きさの違い故に慎重にならざるを得ないという事も是非理解して頂きたいと思います。確かに私にとっても、幹事長時代のあの屈託のない笑顔はとても魅力的でした。

あの小泉総理ですら在任中は 「夜、寝られないんだよなぁ…」 と、我々との懇談の席でおっしゃっていましたから、その重圧たるや想像を絶するものなんでしょう。

 

今週の出来事「終わり良ければすべて良し

 

日本と ASEAN (東南アジア諸国連合) との EPA (経済連携協定) の大筋合意が成立しました。

安倍内閣における私の最後の仕事として、何としても実現させたかった重要案件でありましたが、道のりは極めて厳しいものでした。

二週間ほど前には 『ダメかもしれない』 という重苦しい空気に包まれました。経済産業省のみならず、農水省や外務省の担当責任者を大臣室に呼び込み入念な指示をし、背水の陣を敷いて交渉に臨むように要請しました。

事前にキーマンとなる各国の大臣と電話会談で協力要請をし、在外の日本大使にも電話で入念に指示をしました。

大筋合意の成立した後のパーティで議長役のフィリピンのファビラ大臣が 「甘利大臣の明後日の誕生日をこの合意でお祝いできて良かった。」 と祝福してくれましたが、実はファビラ大臣も私と同じ 8 月 27 日生まれで、妙にウマが合います。

最後の閣議で成功を報告すると、麻生外務大臣が 「良くやった!」 と拍手をしてくれました。