国会リポート 第114号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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いよいよ国会は最終盤です。

教育基本法の改正を受けて、公教育を改革するための教育改革三法案 (これに反対し、デモ行進をしながら聞くに堪えない罵声を浴びせている教員組合の人間が教壇に立っているかと思うとゾッとします) やまったく機能しない組合支配の社会保険庁解体法案、年金受給部分欠損を生じさせないための時効停止法案など、重要法案を短い会期の中で何としても成立させていかなければなりません。

私が取り組んだ電力会社のデータ改ざん隠蔽の総洗い出しもそうでしたが、年金問題も安倍内閣になって突然発生した問題ではなく、十年以上積み残され、安倍内閣にツケが回された問題でした。しかし安倍総理は逃げる事なく 「この問題に対する私の責任は重い。私の責任で一年以内に解決します。」 と言い切りました。

まさに安倍内閣は、何十年に亘って堆積したアカやゴミの大掃除を宿命付けられた内閣のような気がしてなりません。そういえば安倍総理は、就任にあたって戦後レジームからの脱却を訴えました。公教育の再生も地域の再生も社会保障の再構築も、はたまた財政再建も先送りされてきた戦後の大問題であり、これを一手に引き受けて解決していくという安倍総理の並々ならぬ決意が感じ取れます。

安倍総理の傍にいてつくづく感ずることは 『運や家系だけでは 50代そこそこで総理になんぞ絶対になれない。この人はなるべくしてなった人だ。』 という事です。ソフトな笑顔や仕草の裏に隠された 『凄み』 を感じます。初舞台のサミット首脳会議で、地球温暖化問題で対立するアメリカと EUを合意させた手腕はその一端に過ぎません。

 

今週の出来事「わカンヌ映画祭!?

 

カンヌ映画祭でグランプリを獲得した 『殯の森』 の河瀬直美監督が大臣室に受賞の報告に来られました。パリでの OECD理事会や WTO閣僚協議の合間を縫ってカンヌまで飛び、日本側主催のレセプションで挨拶し、河瀬監督と対談し激励して来ましたので、グランプリ受賞の一報を聞いた時には無理をしてカンヌまで行った甲斐があった、と我が事の様に嬉しく思いました。

河瀬さんはかつてカンヌで最優秀新人監督賞も受賞されています。レセプションでの挨拶では 「甘利大臣とは考え方が共通して云々…」 と持ち上げて頂きましたが、改めて大臣室でお話しますと問題意識を共有している感がします。

『殯の森』 という作品を通じて、人間の繋がり、夫婦や親子の絆、家族の愛情、そうした物が育んできた伝統と文化、大切な物を失った時の哀悼の思い等、作品を通じて日本が、そして日本人が失いつつあり失ってはいけないものが何かを訴えようとされています。

「良い作品が経済効果を生まないと、次なる良い作品の制作費が捻出できませんね。」

「そうなんです。いくら評価される作品を作っても経済と結びついていかないと次の作品の制作費が捻出できません。それが悩みなんです。」

そう和歌山弁でおっしゃる河瀬直美さんは知的で清楚な女性でした。

「何とか日本でもこうした良い作品の上映館数が増えるようにお手伝いしますから。」

とは言ったものの、はてどうしようか?と思っていた矢先、コンテンツグローバル戦略会議で、配給ネットワークを持っている映画関係者とご一緒しました。

「殯の森はまだ 10 館しか上映館がないようなんで、何とかしてもらえませんか?」

「えぇ、そういう話があったので直ちに 30館まで増やしたところです。」

事務方から事前に相談させておきましたが、早速協力いただいたようです。

映画祭の受賞作品って芸術的な分だけ中々大ヒットといかないんですよね。まさに 『もがきの森』 状態なんですよね。