総 覧
「日本の電力会社って、どんどん不祥事が出てくるね」
議員仲間ですらこういう問いがあったくらいですから、一般の方にすればボロボロと出てくるデータ改ざん等に不信を募らせる方も多かったと思います。実は出てくるんではなく過去にさかのぼって徹底的に洗い出しをさせている、という事をご存知の方は意外と少ないようです。
私が経済産業大臣に就任して一ヶ月の間に、電力会社による過去のデータ改ざんが何件も内部告発されました。その多くは発電所の安全自身に直接影響を与える深刻なものではありませんでしたが、私が危機感を抱いたのは、小さな事を隠蔽する事によりやがて大きな事まで隠蔽せざるを得ない状況に追い込まれると、それが事故の原因になりかねない、という事でした。たとえ電力会社にとって都合の悪いデータが出たとしても、それを開示してその原因とそれによる影響を客観的に評価し、きちんと対応策が取れるようにする事が何よりも大事だと思いました。そこで、昨年 11 月 30 日、大臣名で全電力会社に過去のデータ改ざん隠蔽をすべて洗い出し、新しい体制を取る事を指示しました。
電力会社側はこの指示を真摯に受け止め、辞めた会社員まで含めて、延べ 7 万人の面接調査を行い、数十年前にさかのぼってデータ改ざん等がないか調べました。その姿勢自身は評価できるものでしたが、私の予想をはるかに上回って改ざん件数が多かった (300 案件以上) 事も残念でしたが、臨界 (ウラン燃料が連続的に反応をする運転状態になる事) にかかわる事故が 2 件隠蔽されていた事は極めて遺憾な事でありました。行政命令・行政指導に加え、厳重注意を行い再発防止体制の構築を指示いたしましたが、これを構築した後には世界一安全・安心な原子力発電所になります (現状でも安全性は世界一だと確信していますが)。
原子力はエネルギー安全保障と地球温暖化防止を両立できる唯一のエネルギーであり、いま世界中が原子力回帰をしている中だけに、関係者にはその自覚をさらに強くしてもらいたいと思います。