総 覧
中国側が日中友好協会や日中友好議員連盟等、日中友好7団体に対し、1 月に訪中要請をして来ました。
政府の重要人物が面会をするという条件付きの訪中要請でもあり、友好議員連盟の幹事長である私も高村会長ともども訪中をする事になりました。
皆中国側の真意を測りかねていましたが、首脳がお会いするので来て欲しい、との要請を断ってしまったら、日中関係は更に険悪になりますし、何のための友好団体かわかりません。喧嘩をしに行くわけでも、いわんやご機嫌をとりに行くわけでもありませんので、友好・親善が進むための方途を探るために訪中団を組むことにいたしました。全体の団長は橋本元総理で、議員連盟からは高村会長に加え、民主党岡田元代表、公明党太田幹事長代理、そして私が参加しました。友好 7 団体からは、シルクロードで有名な平山郁夫画伯や経団連の千速副会長らが同行しました。
胡錦涛主席との対談は 1 時間 40 分にわたり、極めて率直なものになりました。胡主席は、太平洋戦争も近年の日中の摩擦も、その責任は一部の軍部や政治指導者にあって、日本国民にはないと再三強調いたしました。そこには、日中和せば双方の利益になり、扮すれば双方の不利益である、との思いが込められているようでした。
橋本元総理は自分も総理大臣の時に一度は靖国参拝を行なったが、それは自分の叔父や従兄弟や担任の先生が戦地に赴く時に、たとえ戦死しても靖国の杜に帰ってくるからと、小さな頭をなでられて見送ったのが最後であり、その約束を果たすために参拝した。祀られている戦犯の人など誰も知らない。と切々と想いを述べました。胡主席は、首脳にも個人的な感情があるのは分かるが、戦犯が先導した戦争で相手国の無辜の市民が何千万人 (この数字は誇大だと思います) も亡くなっている。指導者は個人の感情の前に相手国の犠牲者への責任を考えるべきではないかと答えました。
また高村会長は、いかなる状況下であろうとあらゆるレベルで交流がなされるべきだと発言し、親中派の野田代議士も、自分ではよしとしている行動が相手の国民の気持ちを傷付けている事に気づき、お互い気を遣うべきだ。日本側の首脳による靖国参拝がそうなら、中国側の愛国教育という名の反日教育もそうではないか。等々、友好を促進するために忌憚ない意見交換が行なわれた、有意義な会談であったと思います。
数年ぶりに胡主席が日本の政治家と会談した事もそうですが、『首相の参拝する気持ちも理解はするが』 と発言したのは初めてだと思います。李肇星外相のように怒りをあらわにした訳でもなく、静かに懇請するような話しぶりは袋小路に入ってしまった日中関係を真面目に悩んでいるようでありました。首脳同士の対立は解決のしようはありますが、国民同士の憎みあいにしてしまったら将来に禍根を残すとの思いを新たにいたしました。帰国後、地元のお祭りで見知らぬ老婦人から 「中国のご機嫌を取りに行って来たんですか?」 と言われ、いくら説明をしても 「そうなんでしょ?そうなんでしょ?あぁ、イヤだ、イヤだ」 とまるで聞く耳も持たない姿に、事の根深さを感じました。