国会リポート 第85号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

秋篠宮殿下ご夫妻に第三子ご懐妊と言う報道は国民等しく喜び合える明るいニュースとして全国を駆け巡りました。一方で、これで皇室典範の議論をしなくてもよくなったと早とちりされている方は大いなる誤解です。

日本は神武天皇以来 125 人の天皇により皇統が継承されておりますが、8 人の女性を除けばすべて男性天皇です。しかも、女性天皇はお子様を設けておられません。125 人すべてが母親を通じて天皇に繋がる系図ではなく、父親を通じて天皇に繋がる男系の継承です。しかし、そんな事ができたのも、いわゆる 「側室制度」 が存在したからなのです。現に 125 人の天皇のうち 58 人は非嫡出子 (側室のお子様) であったという事実がそれを物語っています。昭和天皇陛下が側室制度を廃止されたのは、民主主義・男女平等社会を先導された英断であったと思います。

天皇家と共に存在する宮家は皇統を安定させるための制度とも言えますが、現在の皇室典範では宮家の女性も結婚と同時に皇族を離れなければならない規則になっています。清子内親王殿下と言えども黒田氏と結婚された後は民間人と成られた訳です。現宮家は、秋篠宮家を除くとそれぞれ結婚適齢期かそれに近い女性ばかりのお子様です。いたずらに結論を引き延ばせば次々と宮家が消滅してしまいかねません。現宮家は昭和天皇のご兄弟がそれぞれ創設されたものです。それ以外には 600 年前、崇光天皇のお子様を初代として創設された、伏見宮系統の 11 宮家が存在していましたが、戦後の GHQ による皇室財産の没収により皇籍離脱に至ったものです。

現制度では、天皇家および宮家の男子のお子様しか皇統は受けられませんので、60 年ぶりに旧皇族のうち男子のいる 5 宮家を復帰させるか、あるいは天皇家や宮家のお子様なら跡継ぎは男女を問わないとするかどちらかの選択肢しかありません。ただ、男子の性別にこだわる限りは男子の誕生しない宮家は途絶えて行く運命にありますし、その時にはいったい誰を皇族復帰させるのかという問題に再度直面しなければなりません。そのため、天皇家も宮家も、そのお子様なら性別を問わないとする選択肢しかないように思われます。いずれにしても軽々しく語ることができない問題だけに、慎重に国民の理解を求めて行く事が肝要です。

 

今週の出来事「気配りの甘利

 

数年ぶりに予算委員会の質問に立ちました。与党の筆頭理事から

「今回は自民党を代表する論客で初日の質問者を揃えたい。ついては先生に是非質問に立っていただきたい。」

と、歯の浮くような要請を受けました。

質問となれば、忙殺される中での準備も必要なので固く辞退していたのですが、ついに断りきれず引き受けました。政調会長を筆頭に、4 人の論客 (?) を揃えた訳で、当選回数の高い者が並んだという事も特徴でした。

最初は質問原稿を書いておりましたが、質問書に視線が行き過ぎると面白くないので、質問項目だけメモして後はアドリブでやる事にしました。結果的にはその方が好評でした。ただ私の性癖でアドリブでやるとついウケ狙いをしたくなる衝動を抑えるのが大変でした。

次期総理候補とマスコミが取り上げる 3 氏に平等に質問を割り振る事も気配りの一つですが、官房長官に振るべき質問がなかったものですから、小泉内閣の秘書室長として感想を求める、という言い方をしました。

「安倍さん、答えづらい質問でごめんね。」