国会リポート 第104号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

11月14日から17日まで、APEC閣僚会議に出席してまいりました。

久々の国際会議、しかもメジャーの会議でしたので、緊張するかと思いましたがそんな余裕すらないほどハードスケジュールでした。午前中に直行便で出る予定が国対からストップがかかり、本会議が終わってからにしてくれという事で仕方なく乗り継ぎ便でベトナムのハノイの宿泊先に到着したのは夜の 11 時半過ぎ。翌朝は 7 時から会議に臨む打ち合わせ、9 時から 21 カ国・地域の外相・通産相会議が午後 5 時まで続き、会議の合間や終了後にバイ (二国間) 会談というハードスケジュールが二日間続きました。

各国とも、事前の事務レベル会談で調整した内容と国内議論を加味し閣僚間の主張として用意します。同時通訳付ですから基本的には母国語で良い訳ですが、第一セッションを終わってみると母国語で発言したのは私だけであとは全員英語でのスピーチでした。急遽、随行したスタッフを呼び 「以降の発言はすべて英文に打ち直してくれ。」 と指示し、以後 7 回のスピーチは英語で行いました。

会議の最中に英文に変更させるとは我ながら良い度胸だと思いましたが、隣の席にいた麻生外務大臣は (流石に外相は最初から英語で行っていました) 「甘利先生、自信持って良いよ。ちゃんと英語に聞こえてるから。」 と変な激励をしてくれました。英会話は得手ではありませんが、読むのには自信があります。度胸が座ると次第によどみなくなってきました。「いやぁ、ますます良くなってくるよ。あの辺で喋ってる連中 (他国の外相) に比べたら遥かに上手いよ!自信持って良いって。」 麻生さんて何て良い人なんだろう。

APEC 閣僚会議の取りまとめ合意は、(1) WTOドーハラウンドの早期再開・妥結、(2) ボゴール目標 (先進国は 2010 年・途上国は 2020 年までに APEC 域内の貿易・投資の自由化目標を達成する) を達成、(3) APEC 域内のFTA (貿易自由化) を将来の目標として検討する、という事でありました。

バイ会談は韓国、シンガポール、中国、アメリカ、そして WTO ラミー事務局長とそれぞれ行いました。かなり突っ込んだ本音の話し合いができたと思います。韓国とは、中断していた FTA 協議の再開に向けて事務レベルで調整させる事で合意できましたし、シンガポールとは東アジア構想の重要性を再確認いたしました。中国との話し合いは二時間に及び、信頼関係を構築できたと思います。ラミー事務局長とは事前に電話会談で WTO 交渉再開の具体的手立てを要請しておきましたので、会談終了後 「甘利大臣からの宿題の回答になりましたか?」 と問われ、「100 点満点です。」 と答える場面がありました。

それを受けてアメリカの USTR の鉄腕女史シュワブ代表との会談は、先方が 30 分しか時間がないとの予定を 20 分オーバーし、最後は WTO 交渉再開の手法で意を通ずるところまで到達する事ができました。

 

今週の出来事「約束手形

 

日本のODAにより、ベトナムを代表するハノイ工科大学に、日本への留学をカリキュラムに組み込んだ IT 学科ができました。

数十倍の難関を突破した 122人の一期生が私の訪問を拍手で迎えてくれました。壇上のスピーチで私から

「あなた達はベトナムを代表するエリートです。これからのベトナムを担い日本との架け橋になる、かけがえのない人材です。どうか自信と誇りと情熱を持って勉強して欲しい。日本に留学をした後には、日本の企業かベトナムの日系企業に就職をする事になると思います。真面目に勉強したのに万が一にも就職できなかったという人がいたら私に言って来て欲しい。あなた方の将来は経済産業大臣たる私が保証します。」

万雷の拍手を浴びました。