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ライブドアの堀江社長がニッポン放送の株を買い占めて自社の傘下に置こうとした事件は M & A (企業の買収と合併) の典型的な例として大きな話題を呼びました。
莫大な資金を持っているか集めるかができれば、株式市場でどんな会社であろうと株を買い占め、経営権を握る事ができるのは資本主義市場経済の原理原則です。世の中には株の発行時価総額が百億しかないのに貯め込んでいる内部留保が二百億という会社もあります。百億円で株を買い占めれば二百億円が手に入るという事になりますから、内部留保や資産に比べて株価が安い企業は狙われやすくなります。
事実、スティール・パートナーズという外資の投資ファンドは、(株)ソトーという日本の企業を狙い撃ちにしました。内部留保がたくさんあるのに株価が低い、そこで株を買い占め (株)ソトーの経営陣に内部留保を配当として株主に還元するか経営を交代するかを迫りました。慌てた (株)ソトーの経営陣は急遽内部留保を削り配当に廻し、結果として株価を引き上げ、防衛に成功しましたが、スティール・パートナーズは高くなった株を売りぬけ、配当と併せて短期間にまんまと数十億をせしめました。(株)ソトーはといえば、株価こそ上がりましたが内部留保をかすめ取られ、ネットの企業価値は何ら変わらないという結果でした。こんな事なら最初から内部留保を配当に回していれば、株価は上がり数十億の損はなかったという事になります。
M & A は競争力を高める企業戦略の一つの手法ですから、使われる場合は企業価値を高める M & A が推進され、企業の資産をかすめ取るような M & A は防止していかなければなりません。
良質な M & A が推進されるよう、私が座長となった企業統治委員会で十数回の会議を重ね 7 月 13 日に提言を行いました。かなり話題を呼びまして新聞・雑誌・テレビの取材や講演依頼が殺到しています。金融や証券の世界には不案内だった私も、多少ものが言えるようになりました。
日本の企業は会社の内容に比べて株価がかなり低く、お買い得となっていますので経営者は株主利益という事を今まで以上に考えた経営が求められます。