総 覧
薄氷を踏む思いで衆議院を可決通過した郵政民営化法案は、いよいよ成立への攻防をかけて参議院での審議がスタートしました。
衆議院で反対票を投じた者の中には、投票直後に 「まさか否決される事はないでしょうね」 と、青くなりながら聞いてくる者が何人か居ました。反対票を投じておいて否決の心配をするのもおかしな話ですが、反対派の本音が垣間見えるような現象でした。そういえば、反対票を投じた某若手議員に 「可決されて良かったよな。さもなければ無所属で自民党公認を相手に戦うところだったぜ。」 と言ったところ 「綿密に票読みして自分が反対票を投じても否決されないと読みましたから」 との事。しかし、あと三人がそう思っていたら否決され総選挙になっていました。
いまや郵政民営化法案は政策論議ではなく完全に政局論議になってきました。つまり、法案の中身というより、強引な手法が気に入らない、小泉総理の独善的対応が我慢ならないという主張になっています。昨日まではトップダウンによるリーダーシップと呼ばれていたものが、今日は独断専行と非難される訳ですからつくづく政治は難しいものです。小泉総理にすれば 30 年間郵政民営化と叫び続け数次の総裁選や総選挙でも公約に掲げた訳ですから 「何を今更」 という思いでしょう。
総理はこの法案への賛否を内閣に対する信任・不信任と受け止めると宣言していますから、否決されれば解散をするというのは当然の成り行きと思われます。否決に追い込むけれど解散はしてくれるなとはまるで 「こちらから喧嘩を売るけど応戦せず白旗を揚げてくれ」 というようなもので、いささか情けない話です。「除名覚悟で対峙する」 というのが正しい対決の仕方ではないでしょうか。
政局であればあるほど、こんな事(総理のやりかたが気に入らない)で自民党を分裂させてはならないと思っている議員が大多数です (衆議院で 51 人が反対や棄権をしたといえ 200 人近くは賛成をした訳ですから)。
先日、スペイン大使公邸でのディナーに呼ばれロシア大使・モロッコ大使と 4 人で食事をした際、何で与党が反対するのか、何でこんな事で解散するのか分からないと聞かれましたが、分かりやすく説明すると、「貴方の様な説明を最初からすれば良いのに」 と言われたのには喜んで良いのか悲しんで良いのか…。