国会リポート 第71号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

地球温暖化防止のため、国会内の室温をやや高めの 28 度に設定し、その見合いとしてノーネクタイ・ノー上着運動をスタートさせる事になりました。期間は毎年 6 月 1 日から 9 月 30 日までです。

かつて、省エネルックという妙ちくりんなファッションが提唱され、あっという間に消滅した経験に鑑み、いかにファッショナブルに省エネを進めるかという事で 「クール・ビズ」 なる用語が発表されました。クールとは 「涼しい」 という意味と同時に 「カッコいい・イかす」 という意味がありビズとは 「ビジネス」 を意味します。つまり、涼しくカッコよく仕事をするという事なのでしょう。 ところが、本会議場に入る時には上着・ネクタイ着用とあり、参議院はこの運動に参加しない (もっとも参議院では以前からノーネクタイ可という話もありますが) というものですから、一番困るのは役人です。上司からの指示でワイシャツで出向いた先で議員が上着ネクタイ着用では居場所がないとの事。ある団体の総会後の懇親会にクール・ビズで出席したところ、他の議員は全員が上着着用、一人だけ浮いているとワイシャツ姿の某省の審議官が駆け寄ってきて 「先生が来られてホッとしました。我々だけがワイシャツ姿では隅っこに隠れて居るようです。」 と最大級に感謝されました。議員は自分の好み以前に周りへの配慮が必要のようです。

部屋の温度を 28 度 (通常は 25 度前後) にセットするだけで何百万トンの CO2 削減になるそうで、加えて女性の冷え性予防には画期的だという事ですし、ファッション経済効果は最大 6,000 億円というに至っては一石三鳥の政策です(私も相当出費しました。トホホ・・・)。ただしネクタイ屋さんはポケットチーフの提案等の工夫は必要ですが。このところデパートに行けば必ず 2 ~ 3 人の国会議員がうろうろしています。明日は一体何を着れば良いのか。郵政民営化より、日中関係より、目下の議員連中の悩みはクール・ビズのようです。

 

今週の出来事「テクニック

 

先々週 (5 月 26 日)、私が取りまとめた自民党の知的財産推進計画 2005 の提言を小泉総理に説明するため総理官邸に出向きました。いくつかある応接間で面会するのが通例ですが、今回は五階の総理執務室でお待ちでした。知財推進計画とは特許や著作権による経済戦略を政府が組織的に推進する重要な国家戦略です。

「知財戦略は総理在任の四年間で飛躍的に進みました。それと言うのも、総理が 『郵政改革』 と同じくらいに熱意を注いでやっていただいているからですよ。」

「うん、知財は郵政と違って反対する者は居ないからな。」

「ところで、この提言の中の 『模造品防止国際条約の日本からの提案』 は是非総理に実現してもらいたいんです。日本から世界に向けて国際条約を提案した例は今までにないと思いますよ。」

ちょっと考え込んでいた総理は

「岡田君 (総理秘書官)、今の話、具体的に検討してくれ。」

総理をその気にさせるには、させるだけの運び方があるんです。