国会リポート 第67号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

総 覧

3 月 23 日、平成 17 年度予算が成立しました。戦後 4 番目の早期成立だそうです。(毎日新聞-記事 / 読売新聞-記事 / 朝日新聞-記事) これにより永田町の関心は一気に郵政民営化法に移りました。

小泉総理は今月中の党内調整を武部幹事長に要請しましたが、すかさず参議院片山幹事長から 「一週間で調整などできっこない」 と反発があがりました。アングラ情報では、法案の国会提出はゴールデンウィーク前後と言われていましたから、ひと月早いペースには当然不協和音が予想されます。しかし、4 月上旬に国会提出をしなければ 6 月 19 日までの会期内には成立は難しく 「会期延長は考えていない」 と総理が発言する以上、早急に党内手続きを指示するのは当然の行為です。

当選 6 回で抜擢をされた武部幹事長は、周りが先輩だらけという事もあって、取りまとめのための指揮権発動がしづらく、それだけにストレスが溜まっていくようです。党内の大勢は消極的賛成派だと思いますが、強固な反対派に比べて強固な賛成派が居ないという事が幹事長の悩みの種です。時間をかければ落ち着く話だと思いますが、当面は執行部の手腕が問われます。

一方、私は予算の重責から解放されるや直ちに政策担当者としての仕事が待っていました。街作り三法見直しワーキングチームの座長として夏までに提言案をまとめなければなりませんし、知的財産政策の小委員長として新しい事態に対応する特許制度の提言も取りまとめ中であり、エネルギー政策小委員長として高速増殖炉もんじゅ再開や石油価格高騰、京都議定書への取り組み等を含めたエネルギー基本計画の見直しもスタートさせなければなりません。

加えてライブドアとニッポン放送を端緒にした、会社法の現代化・国際化に伴う M & A (買収・合併) 対策の環境整備に関して 2 ~ 3 発言したところ、新たに設立された党の企業統治委員会の委員長を引き受ける羽目になりました。この委員会は 29 日に発足しますが、マスコミの関心が高く、連日問い合わせや取材を受けております。事務局長には予算委員会で理事を務めてくれた茂木前大臣を指名しました。ハーバードの大学院卒で外資に携わった経験もあるので、いいチームワークが組めると思います。

国際化を進展させる中で、守るべきは守る。なるほどと思わせる答申をまとめるつもりです。

 

今週の出来事「シナリオライター

 

予算委員会での労をねぎらわれて委員長と与党の理事が総理から夕食に招待されました。

小泉総理はフレンチよりはイタリアンがお好きなようで、話題になるレストランを良く使われます (総理が使うから話題になるのかも)。

「どうしてフレンチじゃなくってイタリアンなんですか?」

私が訪ねると、

「イタリアンならそれぞれが別々の料理をとって少しずつシェアできるじゃない。フレンチだとそうはいかないもんなぁ。」

との事でした。伊藤公介理事が

「総理、いま一番したい事は何ですか?」

と聞くと

「できるだけ早く郵政民営化法案を成立させて残りの任期を全うし、それからゆっくり過ごしたい」

との事。私が

「郵政民営化法が成立するとその後、総理は燃え尽き症候群になってしまうんではないかとマスコミが心配をしていますが」

と尋ねましたが、他の理事が矢継ぎ早に総理に別の質問を浴びせるものですから肝心の答えが聞けないうちに次の話題に移ってしまいました。

あっという間に二時間が過ぎて散会の際、

「表に記者団が待ち構えて私に代表してブリーフをしてくれ、と要請があるんですがどういう会話を交わしたという事にしますか?」

「うん。これこれの会話があった。と言う事にしてくれ。」

往々にして事前打ち合わせをした記者ブリーフが行われるもので、酒の席でもミスリードがないように段取りするのが常です。