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今年もあと数日となりました。本当にこの一年お世話になりました。
さて、24 日に来年度予算の政府原案が閣議決定されました。総額は 82 兆 1829 億円ですが、借金の利払い費と県や市町村に交付する地方交付税交付金を除いた一般歳出は三年ぶりに縮小されました。定率減税の半減と併せ、歳入を増やし歳出を減らすという決断をした訳です。国が抱える国債や借入金などを合わせた国の借金総額は九月末の時点で 730 兆円を超えて、先進国中最悪の状態となっていますから、自転車操業の打破に向けてようやく重い腰をあげたということになります。かつて橋本内閣の時に財政再建に取り組もうとしましたが、消費税の引き上げに特別減税の廃止、さらに医療費の引き上げ等 9 兆円の増税と山一證券・拓殖銀行の破綻など金融不安が重なって失速をし、その後危機打開のため小渕内閣の定率減税の断行による景気回復策へと繋がっていきました。今回は景気の回復・不良債権処理の進展等を踏まえた上でそろりそろりと財政再建に踏み出したといえます。
「増税の前に行革を」 「国民に負担を強いる前に政府の無駄を省け」 とはテレビのコメンテーターの決まり文句ですが、行革に終わりはありません。不断の見直しこそ行革の原点である以上、財政再建のためには複数の手法を同時進行していかなくてはなりません。歳出削減・歳入増・規制改革の三つの合わせ技で痛みを最小限に再建を図ることが可能になります。公共施設を民間資本と民間運営で賄うという PFI が規制改革の一つとして有名ですが、箱物以外の行政事業にも民間手法を投入しようとするのが、いま脚光をあびている 「市場化テスト」 です。官が行っている事業を、いま担当している官庁と民間事業者とで競争入札するやりかたです。
アメリカでは下水処理場の運営を官庁と民間とで競争入札し、民間が落札し大幅にコストを削減できたという報告もあります。駐車違反の取締りを県警と民間事業者が競争入札をするなどという案も取りざたされています。ただ一方、安ければいいという事でもありません。公権力の行使は法律によって裏打ちされている訳ですから、民間業者が勝手に行使する訳にはいきません。コストだけで論ぜられる部分とそうでない部分を仕分けして市場化テストにかける必要があります。物事にはすべからく光の部分と影の部分がありますから、複眼思考が必要です。