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先週の木曜日、消息不明の日本人フリーライターと NGO メンバーが解放され、先の 3人と合わせ全員無事であったことに安堵しました。先の 3人が拉致され警鐘を鳴らされている最中に、のこのこと出掛けていった 2人には憤りさえ感じますが、改めて 「世界の常識は日本の非常識」 を痛感させられました。
犯罪者の理不尽な要求に国家が応ずることになれば、それが前例となって新たな犯罪を誘発することになり、かえって危険度が増すということは世界の常識です。かつて 「一人の命は地球よりも重い」 という 「迷」 せりふを残し、人質解放のために 600万ドルの身代金を付けて日本赤軍を要求どおり北朝鮮に逃がした行為は、後々まで国際社会の非難を浴び、国家としての信用を失墜した歴史として記憶に新しいところです。要求に応じる 「カモ」 の国として、世界各地で身代金目当ての日本人誘拐事件が後を絶ちません。
事件発生後、ただちに我が自民党も執行部を中心に対策本部を設置し、私も本部員の一員として地元日程をキャンセルして土曜も日曜も党本部へ通いました。当初知り得る限りの情報を提供していた外務省は途中からガードを固め、一切の情報を表に出さないようになりました。マスコミはイライラを募らせたようですが、危機管理には大切なことで、例えば犯人はどの地域にいるどの部族だと発表すれば、犯人は居場所と犯人像を特定され、逆に身の危険を感じ人質を殺害して逃走する恐れも出てきます。また情報源を発表すれば、先方が身の危険を感じ二度と情報を提供してくれなくなります。このように危機管理は情報管理でもありますから、被害者の家族に 「政府はちっとも情報をよこさない」 と言われても、それは被害者の安全を第一に考える故のことなのです。
外務省はイラクへの渡航禁止勧告 (退避勧告) を 27回発令し、生命の安全の責任を負えない旨も伝達しましたが、それを無視して入国してしまう人は法的にも対処の術もなく、今後同様の事件への対応は自己責任を徹底する以外にありません。国内ですら冬山に登る際には天候を確かめ、装備を充実し、入下山日程を連絡する等、周到な準備が必要となります。天気予報を無視し、スニーカーやハイヒールで登る人は必ず遭難してしまいます。この種の事件で他国には対策本部すら設置されないことを考えると、政府の力の及ばない地域では自己責任、ということの意味を考えさせられる事件でした。
NGO 活動のプロに訊いてみると、現地の影響力を持っているグループと事前に話をつけ、何かあった時には保証人になってもらう等の周到な根回しを組織的に行っているようです。治安の不安定な地域への NGO 活動について、ノウハウを共有することが迫られています。