国会リポート 第37号

甘利明本人が綴る、毎月2回のコラムです。国政で今何がおきているのか解りやすく解説しています。

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国会は 11月 27日で終わりましたが、自民党の議員にとってはその後 1ヶ月が 1年で一番忙しいシーズンになります。

11月下旬から始まる税制調査会は翌年度の各種税制度を決める重要な会議でありますし、税制度が決まらなければ翌年の税収が確定しません。税収が確定しなければ予算が編成できませんので、年末に向けて大わらわ、喧々諤々の議論が続きます。

自民党税制調査会は会長、副会長、小委員長、顧問および幹事で構成される幹部会と、誰もが参加できる小委員会とで構成されています。従来は幹部会の上に会長、小委員長、顧問で構成される 「インナー」と 呼ばれる秘密会があり、事実上そこで意思決定をされていました。今回、税制調査会の改革で内外に批判の多いインナーを廃止するということにし、議論の集約は幹部会で行うことになりました。

そこで 7 ~ 8 名いる顧問を 3名に、30名の副会長を 15名に、10名の幹事を5名にそれぞれ半減し、議論を集約し易いよう幹部会をスリム化しました。その際、小委員長の町村信孝氏から電話があり、

「甘利さんのとこの派閥の副会長を半分にする人選をそっちでやってくれない?」

「冗談じゃないよ、そんなこと俺がやったらどんな恨みを買うか分からない。そっちで各派閥とも一刀両断にやってもらうのが一番公平でいい」

見事スリム化は完成しましたが、外された人達の不満は大変なものです。私はここ 10年ずっと幹部会のメンバーですが、今回も副会長として担当していくことになりました。

さて、今次税調は財政再建推進の中でデフレ脱却を確実なものにするために何ができるのか。加えて、地方の自立と行革のいわゆる三位一体の議論。そして年金改革。その一翼を担う 「基礎年金 (国民年金) の国庫負担割合を 1/3から 1/2に増やすことを付記した年金法改正」 は 2年前に成立しており、そこには 「適切な財源措置をしつつ 16年度から実施する」と 書いてあります。「適切な財源措置」 で揉めておりまして、150兆円に上る厚生年金の積立金を取り崩せとか、橋本内閣当時導入の定率減税を廃止しろとか言われておりますが、積立金は 2 ~ 3 年後には厚生年金の掛けている人ともらう人のバランスが崩れ出しますから、年間 40兆円の年金支払いの収支差を補填していくためには、放っておけばあっという間に取り崩されてしまいますし、厚生年金の積み立てを他の基礎年金の補填に流用するのは筋が違うとの議論もあります。定率減税は景気回復策として導入したものであり、景気が回復しないのに止めてしまうのは単なる増税であり、景気が回復したとしても廃止による税収は財政再建に充てられるべきとの意見が主です。

そうすると、どうしても行き着くところは、消費税を引き上げてそれを社会保障目的税とするしかない、というのが最終結論になります。でも小泉総理の在任中は上げないことになっていますので、その 3年間をどうするのか、です。

 

今週の出来事「シンナーは体に悪い?

 

自民党税制調査会のインナーは廃止されましたが、またぞろ顧問と会長、小委員長による打合せが内々に開かれたようです。これは新インナー、略してシンナーと言うのだそうです。

でもシンナーって、吸いすぎると絶対体を壊すよね。